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「避難して」涙声の放送が住民を動かす 中渡・球磨村防災管理官、情報集め「命の危険」 熊本

避難所に設置された臨時の村役場で職員に指示を出す中渡徹防災管理官(中央)=熊本県球磨村
避難所に設置された臨時の村役場で職員に指示を出す中渡徹防災管理官(中央)=熊本県球磨村

 「球磨川は氾濫したので、避難してください。命の危険があります」。4日午前5時ごろ、熊本県球磨村。雨が降り続く中、防災無線から繰り返し流れてきたアナウンスは涙声だった。放送を聞いた村民らは、悲壮な訴えに「動かないと」と行動。村内の特別養護老人ホーム「千寿園」では14人が犠牲になったものの、アナウンスのおかげで助かった村民からは感謝する声が上がっている。

 千寿園近くの高台に住む氏川平さん(76)は4日午前3時ごろ、「2階に避難を」という防災無線の呼び掛けを自宅で聞いた。「堤防があるので、警報はあっても浸水の被害は少ないと思っていた」と振り返る。

 だが2時間後、放送の雰囲気は一変する。「命の危険性が迫っているので避難してください」。鬼気迫る声だった。早朝の薄明かりを頼りに、自宅より低い場所にある住宅を見下ろすと、住民らが足元まで水につかりながら会話していた。

 氏川さん夫妻は慌てて近隣住民に、氏川さん方への避難を促す。半身不随や認知症の高齢者など、24人もの人が集まった。低体温症となっていた人も。水かさは見る間に増し、低い場所にある家は2階まで水没していた。氏川さん方にも水は迫ったが、玄関に浸水する寸前で止まった。氏川さん夫妻は「避難がもう少し遅ければもっと犠牲者が出た。涙声だったから、動かないといけないと思った」と振り返った。

 主に放送を担当したのは、同村の中渡徹防災管理官。3日午前から、これまでの雨量や梅雨前線などの情報収集を開始。大雨・洪水警戒レベルのレベル3「避難準備・高齢者等避難開始」が発令された同日午後5時から、本格的に放送をしていた。

 元自衛官の中渡さんは「上流全域に雨が降り、かなりの浸水があると覚悟した。今までの水害とは直感的に違うと思った」と当時の緊迫した状況を振り返る。放送中は「とにかく俺の言っていることを信じて逃げてくれ。水が来てくれるな」と祈るような気持ちだった。全力を尽くしたあの日から10日。「全ての村民が助かってくれれば良かった」との思いが頭をかすめる。

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