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【書と歩んで】(3)中国大使館文化部賞・青木翠葉さん(79) 心の風景を一気に

 「本当に、ここまでずっと書道を続けてきたおかげだと思っています」と、青木翠葉さん(79)は受賞の喜びを笑顔で語った。受賞作品の漢詩は、世界有数の大河である中国の黄河周辺の雄大な自然を描写したものだ。

 「にはち」(約60センチ×240センチ)と呼ばれる大きな書道紙にしたためられた作品名は「過潼関(どうかん)」。「潼関を過ぐ」と読む。潼関とは、現在の中国・陝西省周辺にあった関所の名前だ。

 黄河が屈曲する場所にあたる同地は、交通や軍事の要衝であったとされている。この漢詩は、黄河の流れをのぞみつつ、目の前に展開される豊かな自然の様子をつづったもので、唐の時代(618~907年)晩期の作とされる。

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 黄河に沿ってうねるような潼関の地では、遠くからは夜明けを告げる鶏の鳴き声が聞こえ、山並みにたれこめた雲の中を一列になった雁が飛ぶ。流れゆく川は美しく、秋の山は見飽きることがない-。

 「何事もなく過ぎてゆく自然の風景ながらも、スケールの大きさがすてきだと思いました。『飽きることがない』という点は、好きな書道ができるという自分の今の環境に共通するところもあり、以前から書いてみたいと思っていた作品です」と詩の魅力を語った。

 書く際に一番気を付けているところは、余白と文字のバランスだ。「書は絵と同じように最初は視覚に訴えるものです。うまくかみ合わせながら、密になりすぎないように気を配りました」。この作品では約30分の時間をかけて、自分の心に映った風景を一気に書き上げたという。

 字がきれいだった兄の影響もあって、小さいころから字を書くこと自体に親しみがあった。出身の長野県木島平(きじまだいら)村の近くには、千曲川が流れている。同川は、日本一の長さとして知られる信濃川の上流部分だ。黄河の風景とは違えども、おおらかに流れる川のイメージには、幼少のころから見てきた千曲川の流れも、確かに投影されている。

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 書道を本格的に始めたのは、古里を離れて横浜市に移ってからで、今から約50年前のこと。まだ子供が小さく、近所で何か習い事を始めようと思い立ち、自宅近くの書道教室を訪れたのがきっかけだったという。その後、親の介護などでしばらく中断していた時期もあったが、遠藤岑翠氏(全日本新芸書道会創立者)と知り合う機会があり、氏の人柄と漢詩の魅力に心を打たれたのが、自らの「書の道」の原点になった。

 現在は自宅で小学生から80代の大人まで、約10人の生徒に書道を教えている。書道でもっとも大切なのは、正しい筆遣いや線質などの基本を教えること。しかし、それだけでなく、書き手それぞれの良い個性を見つけ出し、そこを伸ばしていくことを主眼に置いているという。

 教室を始めてからも約40年という月日がたち、中には親子2代で通う生徒もいる。教え子たちの上達ぶりを見ることこそが、今一番の喜びだ。「私自身も、常に学ぶ姿勢というものを忘れずに、今後も書き続けたいと思います」と、目を細めながら抱負を語った。(太田泰)

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【プロフィル】青木翠葉

 あおき・すいよう 昭和16年6月、長野県木島平村生まれ。全日本新芸書道会会長補佐。趣味は健康のために続けているヨガなど。

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