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山口・「獺祭」など、AIで酒造りへ試行錯誤続く

日本酒の発酵段階のデータを紙に記録する若手従業員=山口県岩国市の旭酒造
日本酒の発酵段階のデータを紙に記録する若手従業員=山口県岩国市の旭酒造

 熟練の技が必要とされる日本酒造りに人工知能(AI)を取り入れようと挑戦している老舗の酒蔵がある。酒造りの責任者である杜氏の技術をデータ化し伝承するのが目的だが、日本酒がうまいかどうかの最終判断は人の味覚が決め手となる。AIで美酒は造り出せないのか。試行錯誤が続いている。

 ▼最後は人の官能

 「プツプツ」。日本酒の原料となるもろみが入ったタンクに耳を近づけると、発酵する時に泡がはじける音がした。仕込みから9日目。発酵が進み始めたもろみはアルコール度数が6・4%、温度は11度だった。

 日本酒「獺祭」を造る山口県岩国市の旭酒造は、日時、温度、アルコール度数、アミノ酸の量などのデータを毎日手作業で紙に記録している。約30年間続く作業だ。

 獺祭は安倍晋三首相がオバマ前米大統領にプレゼントした酒として知られる。旭酒造の杜氏、西田英隆さんは「いい酒ができたとき、どのような発酵具合だったのか。データから何か導き出せるのではないか」と話す。3年前から富士通と協力してAIにデータを学習させている。

 旭酒造は年間約3千本のタンクで日本酒を醸造。「タンクが違うと一つ一つ発酵具合も違う。AIが予測する最適な数値通りになったとしても、いい酒ができるとは限らない」といい、味のバランスや香りなど最後は人間による官能試験が決め手になるという。

 日本酒の醸造過程には酒米に吸水をさせる「浸漬」という作業がある。水分の量や漬ける時間は熟練した杜氏が酒米の色や膨らみを見ながら経験と勘で決める。

 ▼米と水の関係分析

 岩手県二戸市の酒蔵「南部美人」は、AIが大量の画像や映像を学習して特徴を見つけ出すことができる点に着目。IT企業と協力してカメラで米を撮影し、最適な吸水時間を見つけ出そうとしている。だが久慈浩介社長は「吸水速度や米が割れる様子は一粒一粒ばらばら」と明かし、悪戦苦闘が続いている。

 AIの研究者で酒の味覚にも詳しい東大大学院の鳥海不二夫准教授は、AIを活用するには米の産地や特徴、水分量など同じ条件を再現できるぐらいの幅広いデータが必要と指摘。「味覚は甘味や酸味などが複雑に絡み合い、おいしさのような人間の持つ感覚をセンサーでデータ化するのは簡単ではない」と話す。

 杜氏は一人前になるのに何年もかかる。二つの酒蔵は後継者育成に役立てるため今後もAIの活用を模索する考えだが、南部美人の久慈社長は「AIに取って代わられるのではなく、AIと共存しながら一緒に考えていきたい」と話した。

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