PR

地方 地方

農畜産物の「遺伝資源」イチゴ、和牛の流出防げ 拡散を監視、「鎖国」管理も

ブランドイチゴとして定着した「あまおう」
ブランドイチゴとして定着した「あまおう」

 農林水産物の輸出が拡大するなか、国内の産地が独自に開発した品種や、和牛など「遺伝資源」が流出するケースが後を絶たない。農林水産省は和牛の受精卵や精液について不正な売買や譲渡、取得に刑事罰を設ける制度を創設する方針を固めたが、九州・山口でも農産品などの知的財産の流出を防ぐべく、制度を整備する試みが続いている。(九州総局 中村雅和)

 ◆無施錠

 昨年11月と今年1月、佐賀県が約7年かけて開発した新品種「いちごさん」の苗が盗まれ、県外流出が懸念される事件が発生した。いずれもビニールハウスが無施錠だった。品種の権利は佐賀県が持つが、同県園芸課の担当者は「出来心の犯行を防ぐためにも鍵など侵入対策は必要。JAなどへの指導を徹底するしかない」と述べる。海外での品種登録には「必要性は認識しており、現在申請作業を進めている」とした。

 流出を防ぐ取り組みが進むのが商標名「あまおう」で知られるイチゴ「福岡S6号」の品種の権利を持つ福岡県だ。苗を供給するJA全農ふくれんは、譲渡先を県内の生産者のみに限定して保護してきた。ただ人気品種だけに苗は県外への持ち出しのターゲットにされる。過去には他県産の「あまおう」が市場で流通したほか、苗がインターネットオークションに出品されるケースもあった。同県はそのつど警告、回収するなど拡散を防いできた。

 同県農林業総合試験場によると、平成26年度から30年度までの5年間でも、別品種を「あまおう」と偽装したケース1件、実際に苗が流出したケース1件の計2件の侵害が発覚した。担当者は「苗の流出は農家が悪気なく譲渡するなどして発生していた。ブランド低下が販売収入低下につながる可能性など、啓発を強化している」と話す。あわせて中国や韓国などでも品種登録し、海外に流出した場合の防衛策を講じる。

 ◆精液も

 「和牛のオリンピック」と呼ばれる全国和牛能力共進会(全共)で、日本一にあたる「内閣総理大臣賞」を3大会連続受賞する宮崎牛。宮崎県では長年、行政や生産者らが一丸となってブランド価値向上に取り組んできた。その中で、肉質を決定づける種牛を県家畜改良事業団が一括管理する仕組みを取り入れ、精液を県外に流出させないよう管理を徹底していた。

 ところが平成19年、同県畜産試験場から冷凍精液143本が盗まれる事件が発生し、捜査の過程で精液の県外流出も明らかになった。事件を受け、同県は精液管理システムを刷新し23年に稼働させた。精液の管理や配布先、人工授精状況などを一括して管理する。証明書にも偽造防止策を講じた。

 24年には新たに精液の取り扱い要領を定め、違反した場合は最大5年間、精液の譲渡を行わないという罰則規定も設けた。県外の関係者には「鎖国」とすら呼ばれるほど厳格な仕組みを整えた。

 現在まで違反事例は発生していないといい、同県畜産振興課の担当者は「国の新たな規制により、遺伝情報の保護体制はより強化できるのではないか」と期待を寄せている。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ