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増える外国人患者対応 言葉の壁、未収金が病院圧迫 福岡で学術集会、公的支援求める声

外国人患者を受け入れる病院が課題などについて意見を交わした学術集会
外国人患者を受け入れる病院が課題などについて意見を交わした学術集会

 観光や就労のため日本を訪れる外国人が急増する中、国内の病院が外国人患者の対応に苦慮している。外国人の診療には言葉・文化の壁や医療制度の違いなどが立ちはだかり、トラブルになることも少なくない。こうした問題について意見交換しようと、福岡市内で先月、病院関係者が集まる学術集会が開かれた。出席者の報告からは、受け入れに伴う業務量増加や、医療費の未払いが病院経営を圧迫している現状が浮き彫りになった。(九州総局 高瀬真由子)

 外国人患者の診療には、通訳者の設置や資料の多言語化、日本の医療制度の説明など幅広い対応が求められる。ただ、言語・文化の違いや医療費未払い、公的保険制度の不適切利用などが主な課題として指摘されてきた。

 集会では、このうち医療費未払いについて、東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県浦安市)が、不法滞在の患者による高額未払いが問題となっていることを報告した。他人の在留カードのコピーを提示し、偽名で虫垂炎の手術をしたベトナム国籍の患者の事例もあった。その後、患者とは連絡が取れなくなり、100万円超が未収となった。

 同センターの国際診療支援室の保科ゆい子氏は「外国人の受診が病院の経営を圧迫している。継続して受け入れるには、病院経営が守られる態勢が必要だ」と訴えた。

 公的保険制度の不適切な利用は、日本の社会保障を揺るがし、国家財政を圧迫する点で見過ごせない。学術集会では、日本の健康保険で高額な医療を受けるため不適切に在留資格を取得したとみられる事例も報告された。

 ◆スタッフ離職も

 学術集会を開いたのは、医師らでつくる国際臨床医学会で、約320人が出席した。

 集会の会長を務めた九州大学の清水周次教授は「受け入れ態勢ができていない。人員が足りないなど問題点は数多く、現場は本当に困っている」と語り、解決に向けた情報共有の必要性を指摘した。

 厚生労働省によると、全国の病院を対象に平成30年10月の1カ月間実施した調査で、回答した4395病院のうち、49・5%が外国人患者を受け入れていた。このうち17・8%が医療費の未払いを経験し、その平均額は43万円、総額が100万円を超えた病院もあった。

 一方、医療通訳者や通訳機器の設置など、何らかの多言語対応をしている病院は15%にとどまった。

 専門性が求められる医療通訳者の常駐は、病院にとってコストがかかる問題だ。翻訳機器を置く病院もあるが、医療の現場で正確性に欠ける場合はトラブルの原因にもなる。

 語学が堪能なスタッフが他業務と兼業で対応にあたるケースもあり、一部のスタッフに負担が集中し、離職を招く事例も出ている。

 ◆すでに疲弊

 学術集会では、地方病院から悲痛な声も上がった。

 真生会富山病院(富山県射水市)には、在留パキスタン人やフィリピン、中国などの技能実習生が来院する。医療通訳を務める夏山ほのか氏は「医療現場は日本人の診療ですでに疲弊している。(外国人を受け入れる)態勢整備にはコストがかかり、政府、自治体からの継続的な支援が必要だ」と語った。

 地域の救急医療を担う福岡赤十字病院(福岡市)には、夜間や土日に外国人患者が来ることもある。態勢強化に努めているが、担当者は「必要のない入院を迫られることもある。外国人を取り巻く環境を理解しつつ、どう対応するか試行錯誤を続けている」と訴えた。

 医療現場では、正しくコミュニケーションが取れなければ、患者の命に関わる可能性もあり、対応をおろそかにできない。

 学術集会では「外国人が一人来ると他の業務が止まる」「受診しやすい環境を整えるほど患者が増え、課題に直面する」との声も上がった。参加者の多くは、国などによる支援の充実を求めた。

 外国人が必要な医療を受けられる態勢整備は重要だ。ただ、病院が医師やスタッフ不足に直面するなか、患者対応の負担が増せば、ますます疲弊を招く。

 外国人対応は病院経営のリスクとなり、日本人の診療にも支障をきたしている。国が観光や就労で外国人の受け入れを強化するのなら、けがや病気での来院も増える。医療現場の態勢強化も国が主導する必要があるだろう。

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