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原発稼働に再燃する司法リスク 伊方3号機再び停止へ差し止め仮処分 安定運転・新増設、九州に波及も

四国電力伊方原発と同じ「司法リスク」を抱える九州電力の玄海原発
四国電力伊方原発と同じ「司法リスク」を抱える九州電力の玄海原発

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)が再び停止を余儀なくされる判断に、九州電力などにも衝撃が走った。広島高裁が17日に出した運転差し止め決定は、原子力規制委員会による科学的知見に基づいた安全審査を3人の裁判官が覆したものだ。「食料、国防と並んで国家百年の計」(九電首脳)であるエネルギー政策をめぐる「司法リスク」が再燃した形で、九州で稼働する4基の安定運転や、将来的な新増設議論にも負の影響は避けられない。 (九州総局 中村雅和)

 「対岸の火事ではなく、いつ飛び火してもおかしくないという恐れは感じる」

 決定を受け、九電関係者は表情を曇らせた。

 伊方原発3号機が運転差し止め決定を受けるのは平成29年12月以来、2度目。この時、野々上友之裁判長(当時)は、決定理由に阿蘇山の大規模噴火リスクを挙げ、規制委の判断を不合理と断じた。しかし、30年9月の同高裁異議審は、この判断を覆し、決定を取り消していた。

 今回の決定でも異議審の判断を踏襲し、阿蘇山の噴火により原発の敷地に火砕流が到達する可能性は「十分に小さい」とした。しかし、最終的には、運転差し止めを結論付けた。

 それは、森一岳裁判長ら3人の裁判官が火山灰と活断層の影響という極めて高度かつ専門的な分野について、四電や規制委ら、専門家が積み上げてきた議論を否定したからだ。

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 29年11月、規制委は米セントヘレンズ山の噴火(1980年)や富士山の宝永噴火(1707年)などの研究結果をもとに、緊急時でも原発のディーゼル発電機の吸気フィルターなどが機能できるよう、火山灰の濃度基準を引き上げた。

 しかし今回の決定は「想定は過少であり、それを前提とした規制委の判断も不合理だ」と断じた。

 伊方原発周辺の活断層評価でも同じだ。

 原発が面する愛媛県の佐田岬半島北側には国内最大規模の活断層、中央構造線断層帯が通る。それだけに四電はさまざまな調査、研究を重ねてきた。審理で四電は、断層帯の評価に携わった専門家による「佐田岬半島沿岸地下浅部に活断層はないといえる」との見解も高裁に提出した。

 それに対し、決定では「活断層である可能性は否定できない」などとして、規制委の判断について「過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」とした。

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 電力各社は、保有する原発が新規制基準に適合させられるよう膨大なコストと時間をかけて、科学的な知見を積み上げ、規制委の審査に備える。規制委も各分野の専門家として厳しくチェックし、それをクリアしたものだけが稼働できる。

 原発再稼働でトップランナーを走る九電は、計4基に1兆円規模の安全対策費を投じた。それも新規制基準に適合すれば、安定運転が見込める前提があっての投資だ。

 もともと規制委は、厳しく審査している。テロ対策の「特定重大事故等対処施設」の設置時期をめぐっては、未完成の原発を停止させる「予想外の決定」(九電幹部)を下した。

 しかし、電力会社や規制委といった専門家間で積み上げた議論をちゃぶ台返しするような司法は、それ以上に予測不可能なリスクといえる。九電は、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)で2件、玄海原発(佐賀県玄海町)で3件、同種の訴訟を抱える。

 今回の決定に影響されドミノ的に原発が止まるような事態に陥れば、まずは電力の安定供給に影響が及ぶ。さらに、新増設議論にも二の足を踏まざるを得ない。それらは結果的に家庭生活や経済活動への深刻なダメージとして跳ね返る。

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