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有明海ノリ養殖薬剤訴訟 漁業者側の賠償請求棄却 熊本地裁、不漁の因果関係否定 諫早湾開門反対派に落胆も 熊本

判決を受け、記者会見する原告団長の渡辺年勝氏(右)ら=4日、熊本市中央区
判決を受け、記者会見する原告団長の渡辺年勝氏(右)ら=4日、熊本市中央区

 有明海で続く貝類などの不漁は、ノリ養殖で使われる薬剤が原因だとして、5都県の漁業者ら750人が1人当たり10万円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決で、熊本地裁は4日、「漁獲量への悪影響は科学的に裏付けられていない」として、請求を棄却した。今回の訴訟で、薬剤による悪影響が認定されれば、不漁の主因と批判されてきた国営諫早湾干拓事業をめぐる堤防の開閉議論で、開門の必要はないとする根拠になる可能性があっただけに、干拓地の営農者からは落胆の声も漏れた。(九州総局 小沢慶太)

 「国の言い分がそのまま通った。裁判所は有明海の現状を全く分かっていない。このままでは有明海は死の海になる」

 原告団長の漁師、渡辺年勝氏(72)は、熊本市内で記者会見し、判決に怒りをあらわにした。

 有明海は全国有数の養殖ノリの産地で、昭和50年代から養殖用の網を殺菌するため酸処理剤が用いられていた。水産庁が59年に、酸処理剤について「海中の微生物により分解される有機酸に限る」との通達を出し、使用を容認したことで広がった。

 渡辺氏は中学卒業後の16歳から家業を継いで、有明海でアサリやハマグリなど貝類の漁を営んでいたが、酸処理剤の普及に合わせて漁獲量は激減した。原告側によると、50年代前半に有明海での貝類の漁獲量は年10万トン前後あったが、60年には4万トン強とほぼ半減。平成10年ごろには2万トンを割り込んだ。このため、渡辺氏らは、海洋環境を悪化させ、貝類などが大きな打撃を受け漁業権が侵害されたと主張していた。

 小野寺優子裁判長は判決で、酸処理剤が水質悪化の主要因とする科学的根拠は乏しいと指摘した。原告側が訴えていた水産庁通達の違法性についても「通達に使用を適法とする効果はない」とした。

 判決について原告側代理人の塩田直司弁護士は「有明海がなぜ疲弊しているのか、十分な検証を加えていない」と不満を口にした。

 有明海の漁業不振をめぐっては、諫早湾干拓事業が原因だとして漁業者らが潮受け堤防の開門を求めている。一方で、海水が流れ込むことによる農作物への被害を懸念する干拓地の営農者らは開門に反対する。司法の場でも「開門」と「開門せず」の相反する判断が併存し、現在も訴訟は継続している。

 地元営農者には、今回の熊本地裁の集団訴訟によって、不漁の主因が干拓事業ではなく酸処理剤であると判断されれば、開門反対の主張を補強できるとの期待もあった。干拓地の営農者でつくる平成諫早湾土地改良区の関係者は、今回の判決について「酸処理剤は不漁の原因としてずっと言われてきた。ちゃんと調べもしないで訴えを退けるのは残念だ」と話す。

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