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【言葉の贅肉 伊奈かっぺい綴り方教室】この世にたった1冊の本

 はっきり言って、すっかり忘れていた1冊の本が突然、目の前に出てきた。

 嘘じゃない。自分が作った棚の上から落ちてきたのだ「忘れてんじゃねえよ」と言わんばかりに牡丹餅に成りすました如く。

 その場その場で思いついた思いつきをメモしていた雑ノートを見た知人が「活字で本のようにまとめてみようよ」と面白がって“打って”くれた。それを面白がって束ね製本の真似をして本のようにしてみた1冊。まったくこの世に1冊しかない本。ちゃんとページ数まで“打って”くれていた。なんと231ページ。

 見開きのページにタイトルのような文字がしっかりと「思いつくと思い出す」とあり、余白に鉛筆で走り書き「全部が目次だけの本」「あぁまた泥だらけの綺麗事」「800を超す嘘」「嘘とは思えぬ嘘」

 何かを思いつくと、それに似ていることや共通する何かを付け足して行くやり方。何年かかって書きためたものか。

 「働き盛り働き盛りとおだてられて働かされるより、病身を装って遊んでいるほうがマシだ」-これが1番はじめのコトバ。

 続いて「貧乏はしょうがない。貧乏なのだから。貧乏くさいのが嫌いなのだ。貧乏くさい奴は間違いなく貧乏人ではない」

 「偉い人と偉い奴は全然違う。もちろん、偉い人と偉そうな人も違う。いちばん嫌いなのは『偉そうな奴』だが、悪いことに。これがいちばん多い」

 「アメリカの金持ちはプールにセスナ…いかにも金持ちっぽい。日本の金持ちは腹巻に現金…貧乏くさいねぇ」

 「痛くもない腹をさぐられたぐらいで、腹を立てなくても良い。少しくすぐったいくらいだろうて。本当に痛い腹をさぐられると、痛いぞ、たぶん。だって痛いのだから」

 「たまには思いきり感情的になって腹を立ててみよう。ふだんから腹がすわっていると言われているのだから、たまに腹を立てるのは身体に良いに違いない」

 「嘘はバレないうちは嘘ではない。迷ったことに気がついていないうちは、まだ迷い子ではない。迷っていることに気がついていない幸せ。ありがたいことだ」

 「薄汚れたままで残っている雪は、頑張っているというより、むしろ哀れだ。まるで自分を見ているようで(笑)」

 「年相応の馬鹿。馬鹿に年齢を合わせるのか、年齢に馬鹿を合わせるのか、馬鹿には理解できない。理解していない」

 「てめえこの野郎、おとなしくしていれば良い気になりやがって、と自分で自分に喧嘩を売りたくなる夜がある。ゆうべもそうだった。坊主ではないが今朝まで憎かった」

 「なんだかんだ言ったって、神も仏も金を貸してくれたことはない。苦しくない時に頼んでもだ」

 「どこで間違えたのだろうと人生を振り返って思い悩むことはない。どこでだろうと、いつ頃だろうと間違えたのが確かなのであれば、もう今更どうにもならないのだから」

 「騒いでどうにかなるのなら、とっくに騒いでいる。どうにもならないのを知っているから静かにしているのだよ」

 牡丹餅に成りすました如く棚から落ちてきたこの世に1冊しかない手作り本。書き写してまだ6ページあたり。いつ頃の自分の思いなのであろうか。そして現在に到ったのであろうか。

 =次回は16日に掲載します。

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