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【かながわ美の手帖】川崎市岡本太郎美術館20周年記念展「これまでの企画展みんな見せます!」

 □「これまでの企画展みんな見せます! 後期/芸術と社会・現代の作家たち」 ■「ベラボー」な空間、TAROのDNA

 無類にエネルギッシュな岡本太郎らしく、「これまでの企画展みんな見せます!」。その後期展「芸術と社会・現代の作家たち」が川崎市岡本太郎美術館で開かれている。社会性という視点から、ゴジラやウルトラマンまでも企画展にした実績のある同館。面目躍如の20周年記念展となっている。

 ◆社会との関わり

 1999(平成11)年に開館記念展として開かれた「多面体・岡本太郎」展でサブ担当を務めたのが始まりという同館学芸員の片岡香。「これまで当館は約60回の企画展を行ってきた。それを『みんな見せます!』と言っても、なかなか大変な数。ごく一部にはなるけれど、何をやってきたのかを見てほしい」と力を込める。

 2002年の「ゴジラの時代」展は、1954(昭和29)年の第五福竜丸事件をきっかけに放射線によって古代の恐竜が蘇るという発想から生まれたゴジラを、時代の移り変わりに応じて変貌する社会的事象としてとらえた異色の展覧会だった。「催事場で行われてきた『ゴジラ』展を公立の美術館で、企画展として企画から立ち上げたのは本展が初めてだと思う」と片岡。2006年の「ウルトラマン伝説」展も同様だ。

 開館以来、(1)岡本太郎を顕彰しその芸術性を探るもの(2)岡本太郎が交流した作家とその時代(3)芸術と社会の関わり(4)次世代を創造する作家への支援-の4本柱が同館のコンセプト。今回は、これまでの各展を振り返って象徴的な代表作品や資料を抽出。前期では(1)を、後期では(2)(3)(4)をテーマに紹介している。

 間島領一の「バーガーボーイ」「バーガーガール」(ともに00年)は食がテーマ。会場を走行する電車模型は16年の「鉄道美術館」展に出品。これらも芸術とは一見無縁な社会的事象を扱った作品だ。

 ◆今や中堅以上

 開館の翌年には「その日に-5年後、77年後 震災・記憶・芸術」展を開催。阪神・淡路大震災から5年目、関東大震災から77年目で、震災が芸術のあり方にいかに作用しているのかを、石内都の写真や多和圭三の鉄の塊の彫刻などを通して考察した。16年には「つくることは生きること 震災《明日の神話》」展。太郎の代表作「明日の神話」を通して芸術には何ができるのかを問うた。

 東日本大震災から5年目で、4月には熊本地震が起こっていた。彫刻家の安藤榮作は福島県いわき市で被災し、作品全てを津波で流されたが、「つくることは生きること」のメッセージそのままに、新たな作品を生み、同展に出品した。今回も新作を含む木彫3点が展示されている。

 太郎が交流した作家として池田龍雄、北代省三、村上善男、土方巽、小野佐世男らの作品や当時の記録を展示。03年の「舞踏家 土方巽抄」展では土方の舞踏創造の核心に迫るべく、館内に稽古場を再現し、当時97歳の大野一雄を含めた舞踏家や門下生が毎週末に来場してパフォーマンスなどを行った。「美術館にはあまりない試み」(片岡)だった。

 太郎に始まる日本の現代美術を海外に紹介しようと企画された「CHIKAKU/四次元との対話」展はオーストリア、スペインと巡回した後、06年に凱旋(がいせん)。日高理恵子の「空との距離 III」(04年)はそのときの作品だ。

 TARO賞出身者を中心とする現代の作家たちを今回は26人紹介している。中山ダイスケ、藤井健仁、横井山泰、棚田康司…と、今や中堅以上の、優れた作品を制作している作家ばかりだ。

 金沢健一の「音のかけら-テーブル」(07年)は来館者が椅子に座り、球を放って自由に音を出すことができる。タムラサトルの「100の白熱灯のための接点#3」(19年)は電球をオン・オフする接点の構造を持つ作品。棒が回り、鉄板に接している間は電流が流れる。「美術館での展示はなかなか難しかったが、なんとか作家と一緒にクリアしてきた」(片岡)

 粟野ユミトの「temperament」(19年)も、風・水蒸気・空気の「三態」が立ちのぼる作品だ。それぞれの作家による新しい取り組みが「支援」されている現場を目撃できる。 =敬称略 (山根聡)

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 20周年記念展「これまでの企画展みんな見せます! 後期/芸術と社会・現代の作家たち」は川崎市岡本太郎美術館(川崎市多摩区枡形7の1の5 生田緑地内)で来年1月13日まで。午前9時半から午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜および12月29日~1月3日は休館、1月13日は開館。一般1千円ほか。問い合わせは同館(044・900・9898)。

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【用語解説】岡本太郎現代芸術賞

 岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」を問うための賞。公益財団法人岡本太郎記念現代芸術振興財団と川崎市岡本太郎美術館が主催し、今年で23回目。太郎が没した1996(平成8)年に「岡本太郎記念現代芸術大賞」の名称で創設され、2006年に改称。通称「TARO賞」。「ベラボーな」(太郎の口癖)新しい視点や自由な表現技法で芸術作品の創作に邁進(まいしん)し、次世代を創造する作家の活動を支援している。賞金は岡本太郎賞(1人)200万円、岡本敏子賞(同)100万円ほか。

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