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【しずおか~このひと~】「月光天文台」理事長・今仁節子さん(74)

 ■天文教育を通じて道徳心培う

 全国的に珍しい民間天文台が函南町にある。「月光天文台」だ。天体だけでなく、博物館登録の地学展示室を併設し、科学教育に寄与している。ただ運営の財政基盤を支えるのは全国の教育関係が購入し、年間約10万部が売れるという「天文カレンダー」だ。長年、債務に苦しんだが、今年6月に運営する公益財団法人「国際文化交友会」理事長に就任した今仁節子さん(74)は豊富なアイデアと無給という情熱で刷新を図り、入館者の増加など徐々に成果が表れている。さらなる活性化に向け、エネルギッシュに活動する。(松本恵司)

 --理事長に就任された経緯は

 「以前から月光天文台のアドバイザーとして関わりはありました。その中で、漫然とした経営を鑑みて、このままでは月光天文台が消滅してしまうのではないかという危惧を抱いていました。それでは創始者の理念(天文教育)とかけ離れてしまうと認識を深くしました。捨て身で仕える気概があるか、経営面でも改革、改善なくして天文台は再生できないと考えていたところに、理事長就任の話がありました」

 《月光天文台は昭和32年に沼津市に開設され、50年に函南町に移転。これまで数多くの小惑星を発見し、発見数が世界40位(平成20年時点)にランクされた実績がある。2年前に建物をリニューアルして新天文台を建設し、市民への宇宙をテーマにした天文活動を行っている。博物館登録の地学展示室では珍しい化石、鉱物を展示し、天文・科学教育に寄与している》

 --多額な債務があったと聞きます。それでも就任を決意した理由は

 「(末期といわれたがんを患うなど)極限を体験した者は、自分以外の存在から大いなる恩恵を受け、公のために報恩、報徳の意思が働き、無私の心で行動を起こせるものなのです。働くから元気になる、債務があっても返済できる知恵が働く。小さな目標からスタートし、ここに『苦難を福門』に変えていく意義があると思います」

 --就任してからの改善点は

 「(天文台の)新台長と職員が一丸となって経費の節減と無駄を省き、その結果驚くほど(経費)削減できました。カレンダーや地学展示室、天文展示室の内容を充実し、4階のカフェメニューの改善などで売り上げは前年度比150%となりました。さらに近隣の方たちとの交流を活発にし、広報活動の成果が表れ、県外からの来場者が大幅に増え、夏休み期間は幼稚園から大学生らを含めて4千人以上の来場者が訪れる状況になりました。天文教育を広める活動の成果が確実に出ました。知恵を働かせ、どうやって来場者に喜んでもらえるのか。エネルギーが湧いてくる職場の環境作りが第一義として改革を始めました」

 --天文台の存在価値を認識してもらう活動は

 「月光天文台は60年以上の歴史があり、天文学の世界では知る人ぞ知る小惑星の発見など多岐にわたり、現代人の宇宙認識を高めています。講演会では年2回、著名な天文学者やJAXA(宇宙航空研究開発機構)などによる天文教育の啓発を積極的に行った結果、多くの方に天文に関して認知していただけるようになりました。特に夜空を仰ぐ観望会には行列ができるほど天文愛好者が来場するようになりました。『はやぶさ2』の快挙もあり、驚くほど多くの方が関心を示し、土・日曜日にはプラネタリウム館も満席となり、口コミの来場者が増えました」

 --月光天文台を通して子供たちは天文教育の基礎を学んでいると思います。その観点から天文カレンダーの存在意義は

 「カレンダーは全国の教育関係で購入いただいています。カレンダーの裏面にはさまざまな情報が入っており、教育的には非常に価値のあるものだと思います。その売り上げで天文教育を行っています。今後はカレンダーの販売網をさらに広げる必要があります。自由な発想で運営できる半面、知恵を出し合い、自助努力で運営を行わなければなりません。カレンダーの販売は生命線です」

 --教育面から、今後の日本をよくするためにはどのような考えをお持ちですか

 「今までの講演会で著名な科学者、JAXAの方々の共通の意見は自分で考える能力を身に付け、家庭でもはぐくむこと。英語よりも日本語を勉強し、読解力を身に付けることの重要性を説いています。この基礎があって考える能力が身に付き、特に道徳と科学は両輪で、和の心が宇宙意識とつながり、天文教育のつながりを深めています。戦後教育は道徳を無視し、親や祖先を敬うことを教えなかった社会に警鐘が鳴らされています。大きな負の連鎖が今日の日本です。天文教育は宇宙の存在の中で人間も一つにつながり、全てが恩恵の中に存在する意義を説いています。さまざまな地域で地道な道徳活動、広報活動を行い、日本を良くする一助になればと思います」

                   ◇

【プロフィル】今仁節子

 いまに・せつこ 昭和19年12月12日生まれ。東京の大学を卒業後、百貨店に就職。その後、美術関連の仕事に携わり、米国やカナダなどで起業した。日本に戻り、社会貢献に関連するNPO法人を設立し活動している。座右銘は豊富な人生経験に基づき「覚悟と死生観」。東京都豊島区出身。月光天文台は函南町桑原1308の222。

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