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台風19号 八ツ場ダム「街守ってくれた」 国交相「安全に寄与」、治水効果言及

 来春の本格的運用に向け試験的に水をためていた八ツ場ダム(長野原町)が、台風19号の大雨に対し治水効果を発揮したとの声が強まっている。台風19号が関東地方を直撃した12日から13日にかけ、約7500万立方メートルの水が流れ込み、ほぼ満水となった。国会でも取り上げられた治水効果に、ダムを訪れた下流域の住民からは「街を守ってくれた」と感謝する声も聞かれた。(橋爪一彦)

 貯水率が100%に達した15日、ダムを見下ろせる「ダム見放台」の駐車場には、観光バスや他県からの車などが詰めかけ、記録的雨量で満水となった姿をカメラに収める姿があった。

 「水というより、泥がたまっているみたい。すさまじい量の雨だったと実感しました。八ツ場ダムが下流に住む私たちの街を守ってくれたのかもしれない」

 埼玉県本庄市から訪れた男性(28)は感慨深げに語った。湖面は吾妻川から流れ込んだ茶色く濁った水がたまり、おびただしい数の流木やプラスチックごみが浮かんでいた。

 八ツ場ダムの貯水量は利根川水系では矢木沢ダム、下久保ダムに次ぐ1億750万立方メートルで、東京ドーム87杯分にあたる。

 国土交通省八ツ場ダム工事事務所は1日、堤内仮排水路を閉めて水をためる「試験湛水(たんすい)」を開始。3~4カ月かけて常時満水位(標高583メートル)までため、その後、1日約1メートルずつ下げて約50メートル下の最低水位に近づけながらダム本体や基礎地盤の水漏れがないか、確認していく予定だった。

 予想外の事態に同事務所は「急激な貯水量増加はあったが、異常はない」と語り、治水効果には「まだ試験中で詳細は分からない」と明言しなかった。

 しかし、赤羽一嘉国土交通相は16日の参院予算委員会で「利根川流域の安全な暮らしに大きく寄与する」と述べ、下流域での大きな氾濫を防ぐのに役立ったとの認識を示した。

 台風19号通過後の下流域での増水量から八ツ場ダムの治水効果を限定的に見る意見もある。ただ、このダムの主要目的は当初から治水だった。

 利根川の主要な支流である吾妻川中流部にダムを建設しようとの話が持ち上がったのは昭和22年。カスリーン台風で利根川の堤防が決壊し、1100人の犠牲者が出た惨事がきっかけだった。

 5年後に建設調査が始まったものの賛否が分かれ、反対運動も展開された。ようやく平成7年、事業は本格化したが21年、民主党政権の「建設中止」方針で事業は宙に浮いた。地元自治体から事業継続を求める声もあり27年、本格工事が始まり、試験湛水を迎えた。

 「もうダムはいらない」という声にさらされたこともあった八ツ場ダム。だが全国で50を超す河川が決壊した台風19号の被害を含め、各地で猛威をふるう近年の水害を前に、改めて「治水」の重みを静かに訴えているようにも見えた。

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