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【かながわ美の手帖】そごう美術館「不思議の国のアリス展」

 ■少女のつぶやき、創作意欲を刺激

 世代を超え、世界中で読み継がれているルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』。横浜のそごう美術館で開催中の「不思議の国のアリス展」は日本初公開のキャロルの自筆スケッチなどに加え、内外の著名アーティストたちの「アリス」関連作品を展示。今も作家たちの創作意欲を刺激し続ける物語であることをよく示している。

 ◆挿絵も大当たり

 1862年7月4日のことだった。キャロルはオックスフォード大学クライスト・チャーチの学寮長の娘の3姉妹を連れて川遊びに出かけた。姉妹に「何か面白いお話をして」とせがまれ、ボートをこぎながら即興で語った。

 帰り際、次女のアリス(10)がつぶやいた。「今日のお話は面白かったから、ご本に書いてね」。2年後、アリスを主人公として、キャロル自身が描いた37枚の挿絵入りの手稿本『地下の国のアリス』をアリスに贈った。

 その後、キャロルは周囲にすすめられて同書を加筆修正し、65年に『不思議の国のアリス』の題名で出版。挿絵は当時の有名な風刺漫画家、ジョン・テニエルに頼み、42枚に増えた。大変な評判で、続く72年の『鏡の国のアリス』もテニエルが挿絵を担当。「アリス」といえば彼の描いた白黒の木版画というイメージが定着した。「『不思議-』のアリスは背が伸びたり縮んだりして、次に何が起こるか分からない不安な心理状態。一方、『鏡-』のアリスには自身の変化が起こらず、不安なしに物語の中にいる」と、同展を監修した筑波大学名誉教授で日本ルイス・キャロル協会会長の安井泉は解説。「キャロルは欲張りで、ビクトリア朝時代の文化をさまざまな形で物語の中に引きずり込んでいる。それがテニエルの挿絵から十分に読み取れる形になっている」と、会場での探索を推奨する。

 ◆多種多様に進化

 「アリス」は書籍にとどまらず、映画、音楽、演劇、写真…と広がり続けている。

 『はらぺこあおむし』で知られる絵本作家のエリック・カールは本展のために「チェシャネコいもむし」(2018年)を制作した。チェシャネコは『不思議-』の第6章で初登場するニヤニヤ笑いで人気のネコだ。

 会場のモニターには映画草創期の1903年に制作された無声実写映画『不思議の国のアリス』の現存する約8分間が、33年にゲーリー・クーパーやケーリー・グラントの出演した『不思議の國のアリス』の予告編とともに映されている。

 ディズニーアニメ『ふしぎの国のアリス』のキャラクター・モデルシート、クレヨンで描かれた同アニメのストーリーボード「アリス、イモ虫に出会う」もファンには興味津々だ。

 旧チェコスロバキアの映像作家、ヤン・シュヴァンクマイエルは88年に実験的作風のアニメ『アリス』を制作。本展ではその「『アリス』のための挿絵」(2006年)が見られる。

 1969年のサルバドル・ダリによる絵本『不思議の国のアリス』の原画、ロシアの写真家、ウラジーミル・クラヴィヨ=テレプネフが2010年に撮った「アリスとシロウサギ」などのアリス場面集、さらには草間彌生、清川あさみ、清水真理、舘鼻則孝、山本容子、anno labといった日本人作家の作品も展示され、見ごたえ十分だ。=敬称略(山根聡)

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 「不思議の国のアリス展」は横浜駅東口のそごう美術館(横浜市西区高島2の18の1 そごう横浜店6階)で11月17日まで。午前10時から午後8時(最終日は午後5時まで、入館は閉館の30分前まで)。会期中無休。大人1500円ほか。問い合わせは同館(045・465・5515)。

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 ■ルイス・キャロル(1832~98年)

 英国の数学者、論理学者、写真家、作家、詩人。チェシャー州ダーズバリ生まれ。本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン。オックスフォード大学クライスト・チャーチを卒業後、数学講師となる。言葉遊びに秀で、数字や言葉へのこだわりが強かった。主な作品に『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』『スナーク狩り』『シルヴィーとブルーノ』。

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