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整備の難しさ浮き彫り 石巻・門脇小、「震災遺構」着手へ

 東日本大震災で津波と火災による被害を受けた宮城県石巻市の門脇小校舎を震災遺構として保存・整備するため、中央部を残して両端部を解体する工事が11月上旬をめどに始まることになった。市では「(津波と火災の被害状況が)ありのまま残されている唯一無二の建物」として令和3年度中の公開を目指すが、校舎の保存方法をめぐり、住民の間で意見が割れたのも事実。震災遺構として整備することの難しさが浮き彫りになった。

 ◆防災教育に使用も

 震災時、門脇小学校では児童ら200人以上が校舎裏の高台「日和山」に避難したが、下校途中の児童ら7人が犠牲になった。

 校舎は津波によって約1・8メートル浸水。1階は土砂や割れた窓ガラスがいたるところに見られるほか、教材や上履きなども床に散乱しており、被災時の状況がそのまま残されている。

 同市によると、今回の震災遺構としての整備には復興交付金などが財源として充てられる。総工費約10億円のうち、校舎の耐震補強などの整備には約2億円。安全対策上の観点から立ち入りができない校舎内は、解体予定の校舎北側に建てられる「観察棟」から見学できるようになるという。

 解体工事に先立ち、9日には報道陣に校舎内部が公開された。2、3階部分は津波火災による爪痕が色濃く残り、焼け焦げた机やいす、焼け落ちた天井がその威力を物語っていた。

 同市の担当者によると、津波による火災は燃えた家屋の屋根や車が津波によって流れ着き、校舎に延焼したことで発生したとみられる。校舎の東側の燃え方が激しいが、担当者は「原因は分からない」と説明する。県内の震災遺構のうち、津波火災の被害状況を見学できるのは同校だけだという。

 震災遺構として保存するため、震災前に音楽室や理科室などがあった特別教室棟は「展示棟」として再整備され、同校の歴史や震災時の被害状況などを学べる展示が予定されている。また、防災教育などに使用される多目的室も設置される予定だ。

 同市復興政策部震災伝承推進室の渋谷幸伸室長は「(津波火災の被害状況が)ありのまま残されている唯一無二の建物だ。受け止める側の人はそういったところを直接感じてほしい」と話す。

 ◆「一部」か「全体」か

 ただ、同校の一部保存までの道のりは平坦(へいたん)ではなかった。

 住民を対象に平成27年10月に保存方法などに関するアンケートを実施したところ、解体を望む意見が42・3%、一部保存への賛成が39・6%、全体保存への賛成が17・2%と意見が割れた。

 市はアンケート結果などから、「被災した校舎を見たくない」という地域住民の心理への配慮、さらに建物の維持管理費を抑えるため、28年3月に校舎の「一部保存」を発表した。だが、震災から時間が経過するにつれ、全体保存を訴える地域住民の声も依然として根強く残っている。

 渋谷室長は「全体保存を求める声があるのは認識している」とした上で、「一部保存を表明するまでの過程で、相当の議論をして今回の作業開始に至っている」と話している。(塔野岡剛)

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