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【上州この人】作家・阿部智里さん(27)「自分でしか書けない作品」追求

 姿を人から鳥に変える「八咫烏(やたがらす)」が住む異界を描く壮大な和風ファンタジー小説「八咫烏シリーズ」(文藝春秋)で知られる前橋市出身の作家、阿部智里さん(27)。第1部が完結したシリーズは累計130万部を突破する大ベストセラーとなり、前橋文学館(前橋市千代田町)では20日まで、作品の魅力を伝える企画展が開催中だ。「自分でしか書けない作品」を追求し、さらなる飛翔(ひしょう)を目指す。(宇野貴文)

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 平安時代を想起させる王朝を舞台に、八咫烏たちの恋や友情、権力争い、天敵の猿との攻防などを活写してきた。

 「自分もここに並びたい」と憧れていた前橋文学館。表紙の原画や漫画化されたキャラクターなどが会場を飾る。拡張現実(AR)コーナーではスマートフォンなどを使って作品の世界を体感できる。

 「卵の形で生まれた想像力が孵化(ふか)するのを温かく見守られ、羽ばたくことができた」と感謝する。少女時代、赤城山中腹の幼稚園に通った。

 「山の中で『放牧』されて自由に遊んだ。木登りをするにしても、自分の頭で考えさせられる環境でした」

 自作の物語を親や友人に聞かせるのが好きで、小学2年で作家を志した。愛犬がモデルの冒険小説など習作を重ね、アクション描写の参考にしようと、中学では柔道部に入った。前橋女子高2年の頃、講演にやってきた卒業生の文藝春秋編集者に松本清張賞への応募を勧められた。

 2回目の挑戦で、早稲田大在学中に史上最年少の20歳で受賞。結果判明の前に「デビューしたらアルバイト経験ができないかも」と思い、書店で3カ月間働いた。

 「家で書き損じの紙で本のカバーかけの練習をしたら、白紙の面が表で、本棚が真っ白になってしまいました」

 プロットは綿密に組み立てるが、「書くべきことと見える光景が合致しないと書けない」。キャラクターが「進路相談」に来たり、原稿に納得できず「ボツ」にしたりすることも。東京の文藝春秋執筆室に「カンヅメ」になり、パソコンに向かい格闘する。

 「息抜きはお風呂。近くのお店で買ったプリンを品評するのも楽しい。日本酒が好きで、おつまみになる珍味も常備しています」

 昭和と平成の家族の物語が交互に進み、意外な結末へ導く「発現」(NHK出版)で作風の幅を広げた。八咫烏シリーズ第2部も執筆中だ。

 「実家でも執筆環境が整っていて、本当なら一年の半分は群馬にいるはずなんですけど。実家の猫にも会いたい」

 次はどんな異界へ連れて行ってくれるのか。

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【プロフィル】阿部智里

 あべ・ちさと 平成3年生まれ、前橋市出身。前橋女子高を卒業後、早稲田大文化構想学部在学中の24年に「八咫烏シリーズ」第1巻となる「烏に単(ひとえ)は似合わない」で松本清張賞を受賞し、デビュー。「羽の生えた想像力 阿部智里展」が開催中の前橋文学館で19日午後1時からトーク&サイン会がある。定員100人に達し、キャンセル待ちは当日の状況によって受け付ける。問い合わせは同館(027・235・8011)。

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