PR

地方 地方

【被災地を歩く】福島・広野町 来月初出荷へ…バナナで目指す地域創生

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を進める福島県広野町で、新たな特産品として昨秋植えたバナナの収穫が初めて行われ、10月から市場に出回る見通しになった。事業を展開する広野町振興公社の中津弘文社長(62)は「地域創生の“起爆剤”として成功させたい」と意気込んでいる。

 ◆耐寒性を採用

 広野町振興公社は広野町の100%出資会社で、主に公園の管理運営や学校給食の調理業務などを手がけている。同公社では地域発展につなげる新事業としてバナナの特産品化に乗り出した。

 栽培場所は町内の二ツ沼総合公園にあるビニールハウスで、広さ800平方メートルのものが3棟あり、昨年9月に1棟に植えた150本が収穫時期を迎えた。

 ビニールハウスは平成12年に建設。同振興公社がイチゴや花卉(かき)栽培などを行っていたものの、事業は軌道に乗らず、震災前から使用されていなかった。昨年就任した中津社長は「農業ハウスとして活用できないか知恵を絞った」という。

 候補に挙がったトマトやブドウなどは周辺自治体と競合するため断念し、バナナに着目した。しかし、国内に流通する99・9%が外国産で熱帯雨林の果物。栽培が可能か疑問視する声もあったが、岡山市の農業法人が開発した耐寒性バナナを採用した。

 農薬を使わない有機系の栽培のため、中津社長は「試行錯誤の連続だった」と振り返る。冬場にダニが付き、水をまいて防除したこともあった。品種改良された寒さに強い種類でも霜が降りたら失敗する。猛暑にも弱く、栽培には細心の注意を払ったという。中津社長は「本当に(実が)なるのか半信半疑になったり、花がつかないと悩んだが、流れはつかめた」と話す。

 栽培と並行して、流通経路の確保や単価を下げる策も練った。国産バナナの市場価格は1本600~700円と高額だが、中津社長は「コストダウンし半額以下で提供したい」と夢を描く。

 ◆オーナー制度も

 現在はバナナの苗木のオーナー制度を準備している。企業などに苗木を1本当たり10万円程度で買ってもらい、収穫したバナナを提供するシステム。1本のバナナの苗木から見込める収穫量は150~200本のため一見すると金額は割高だが、オーナーに「支援」の意味合いで苗木を買ってもらう。苗木の購入金額をバナナ自体にも還元し、単価を下げるのが狙いだ。

 全生産量の3割程度をオーナー制にする計画で、趣旨に賛同した協力企業などが続々と集まっているという。最終的にはビニールハウス3棟に計330本余りの木を植え、再来年の3月頃までにオーナー制で2万本、出荷用5万本の計7万本のバナナの生産体制を整えたい考えだ。

 ◆愛称は「綺麗」

 公募で決まったバナナの名前は、広野町への思いを込めて「朝陽に輝く水平線がとても綺麗(きれい)なみかんの丘のある町のバナナ」と長い。これを略して、愛称は「綺麗」になった。

 中津社長は「流通ルートを確立し、将来的には農業生産法人を作りたい。バナナを雇用確保につなげたい」とした上で、「一時の話題に終わらせず、発展させないと意味がない」と気を引き締める。

 バナナで目指す地域創生は、まだ道半ばにある。(芹沢伸生)

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ