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翻弄された諫早干拓 「もう裁判にはうんざり」閉門望む地元営農者 きょう最高裁判決

諫早湾潮受け堤防の北部排水門
諫早湾潮受け堤防の北部排水門

 長崎県諫早市の国営諫早湾干拓事業をめぐり、潮受け堤防の開門を命じた確定判決の無効化を、国が求めた請求異議訴訟の最高裁判決が13日、言い渡される。国側が勝訴すれば、「開門」「開門せず」という相反する司法判断が併存してきた法廷闘争が決着する。堤防閉め切りから20年以上がたつ。「今更、開門はあり得ない」。干拓地の営農者は最高裁の判断を注視している。(九州総局 小沢慶太)

 「もう裁判にはうんざりしている」

 平成諫早湾土地改良区の山開博俊理事長は嘆いた。営農者は今回の請求異議訴訟の当事者ではないが、長年続く法廷闘争にいらだちと戸惑いを抱く。

 堤防は平成9年に閉め切られ、20年から営農が本格的に始まった。同土地改良区には現在、36の経営体が加わる。山開氏は育苗の生産販売会社を営む傍ら、干拓地の約25ヘクタールで白菜やタマネギなどを育てる。

 山開氏ら営農者は、一貫して堤防の開門に反対してきた。理由は明白だ。

 堤防内側にある約2400ヘクタールの調整池は農業に欠かせない水源であり、開門して海水が流れ込めば、使い物にならなくなる。

 農作物への塩害のほか、強風で海水が後背地へ飛ばされる「潮風害」も懸念される。山開氏は「調整池の水が使えなければ、ここで農業はできない」と訴えた。

 ◆板挟み

 開門を命じたのは22年の福岡高裁判決だ。1審佐賀地裁判決を支持し、漁業者ら開門派の訴えを認めた。

 当時の菅直人首相(民主党)が「私なりの知見がある」と上告を断念し、最高裁の判断を仰ぐことなく判決が確定した。この菅氏の判断が、さらなる混乱を引き起こした。

 営農者ら地元は、開門差し止めを求め提訴した。長崎地裁は25年、差し止めを認める仮処分を決定し、29年には判決でも差し止めを命じた。

 「開門」と「開門差し止め」の相反する司法判断に、国は板挟みとなった。

 問題は昨年、和解への期待が高まる場面があった。

 「開門しない代わりに、国が有明海の漁業振興へ100億円の基金を設ける」という案が浮上した。

 有明海沿岸の福岡、熊本、そして佐賀県の各漁協は受け入れを決めた。だが、開門派弁護団は和解を拒否した。

 ◆差し戻しも

 今回の請求異議訴訟は、22年の福岡高裁判決によって開門義務を負った国が、司法判断のねじれなどその後の「事情の変更」を理由に、開門の強制執行を禁止するよう求めた。

 1審の佐賀地裁判決は国の訴えを退けたが、昨年7月の福岡高裁で国が逆転勝訴した。高裁は判決理由の中で漁業者側の共同漁業権の消滅を挙げた。漁協に与えられる漁業権は10年ごとに更新されるが、22年の確定判決の時点で漁業者が持っていた漁業権は25年8月に消滅。開門請求権も失われたと結論づけた。

 この判決を不服とした開門派が上告した。

 13日に想定される最高裁判断は、(1)国の勝訴(2)2審判決を破棄した上で福岡高裁に差し戻し(3)漁業者側の逆転勝訴-だ。

 今回の訴訟が扱われる最高裁第2小法廷は今年6月、諫早干拓に関する別の訴訟で、開門などを求める漁業者側の上告を棄却し、最高裁で初めて開門を認めない判断が確定した。このため、今回も開門派が勝訴する可能性は小さい。

 一方、第2小法廷は7月、判決に先立って弁論を開き、国と漁業者双方から主張を聞いた。最高裁が弁論を開くのは2審判断を変更する場合で、福岡高裁による漁業権に関する判断部分を見直すともみられる。

 開門派弁護団の馬奈木昭雄団長は「常識的に考えれば、最高裁は福岡高裁に審理を差し戻すだろう」との見解を示した。

 差し戻しの場合、高裁での和解協議の再開を促す可能性もあり得る。馬奈木氏は、差し戻された場合も「失うものは何もない。徹底的に闘う」と強調する。和解協議についても「ゼロベースでやるべきだ。閉門や基金を前提とした議論なら頭から拒否する」と語った。

 一方の営農者側弁護団の山下俊夫団長は「すでに開門の可能性は薄いし、開門しても果たして漁場の改善になるのか不明だ」と、開門派の姿勢に疑問を呈す。その上で「基金規模を大きくするなど、いろいろな形で有明海再生事業に取り組めるようにすべきだ」と話した。

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