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「愛されない鉄道は残らない」 宮崎・鹿児島、乗客増へ沿線住民と連携

日向灘に沿った日南線を走る車両=宮崎県日南市
日向灘に沿った日南線を走る車両=宮崎県日南市

 各地の鉄道が人口減少、過疎化に苦しむ中、宮崎、鹿児島で乗客増を目指した新たな試みが動いている。沿線自治体が利用促進策を進んで考え、実行する。収支改善の「特効薬」を見いだすのは困難だが、じわりと体質を改善するように、地域ぐるみの支援策が路線維持につながると期待される。(九州総局 高瀬真由子)

 宮崎、鹿児島両県を通るJR吉都(きっと)線の沿線5市町は今月2日、路線を盛り上げるサポーター募集を始めた。登録者には鉄道振興への協力や、路線の魅力発信へ支援を呼びかける。

 事務局の宮崎県えびの市によると、1千人の登録が目標で、担当者は「地域住民の応援が、鉄道の存続には欠かせない。住民と連携し、利用を促進する」と説明した。

 吉都線と同じように、宮崎、鹿児島を結ぶJR日南線の沿線4市も近く、サポーター募集を始める。

 支援の発端は、昨年3月のダイヤ改正だった。JR九州は、過去最大となる1日117本の減便を実施した。吉都線は平日11往復から8往復半となり、日南線の油津-志布志も1日10往復から8往復に減った。

 両線の利用者は激減している。昭和62年度からの30年で、吉都線は7割減った。日南線も半減だ。

 JR九州がまとめた1日の平均乗客数(輸送密度)では、吉都線が少ない方から2番目(465人)、日南線が3番目(752人)となっている。

 宮崎県の呼びかけで昨年6月、両線の振興策を考える「みやざき地域鉄道応援団」が発足した。沿線自治体、有識者、JR九州などが同12月、サポーター制度や、車内イベント開催などの提言をまとめた。

 一方、鹿児島県でも今年4月、自治体や事業者が路線振興を話し合う「かごしま鉄道利用促進検討会」が誕生した。県と県内の14自治体、JR九州、第三セクターの肥薩おれんじ鉄道に加え、国土交通省九州運輸局、有識者、経済団体も参加している。

 宮崎、鹿児島のこうした会議では、出席者が「地元に愛されない鉄道は残らない」との意識を共有した。

 鹿児島県によると、ダイヤ改正以降、沿線関係者から「従来の事業者への要望活動に加え、一緒に支えることが必要だ」という声が上がるという。

 地域で支える態勢をつくる-。鹿児島の会議ではグループに分かれ、自由にアイデアを出している。

 とはいえ実現には壁もある。鹿児島県の担当者は「振興策には、これまでも取り組んできた。事業化できるアイデアを出すのは難しい」と口にした。

                   ◇

 ■信頼関係を

 九州運輸局は3月、鉄道の維持、活性化について報告書をまとめた。

 この中で、自治体に対して「鉄道維持に対する積極的な取り組みが欠けている」と苦言を呈した。JR九州に代表される事業者には、地域とコミュニケーションを取り、状況を共有するよう注文を付けた。

 JR九州は、乗客減少の危機を繰り返し訴える。管内の在来線は、ごく一部の路線を除き赤字という。

 青柳俊彦社長は、本年度内に路線別の収支を公表し、このデータも基にして、地域と路線維持へ議論したいとの意向を示す。

 ただ、自治体には「JR九州が利用状況を公表するようになってから、廃線を身構えるようになった」との声がある。JR側が予定する路線別収支の公表にも、「それを理由に廃線議論を加速させるのではないか」と懸念を抱く。

 こうした不信感は、協議の場設置のハードルになる。

 減便や廃線を回避するには、自治体と事業者が信頼関係に基づいて利用促進のアイデアを議論し、具現化する必要がある。宮崎、鹿児島の取り組みがそのモデルとなるか、関心を呼んでいる。

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