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相模原殺傷3年 「老障介護の現状にも目を」 施設たらい回し、追い込まれ

 平成29年の梅雨のある日。重度の知的障害と自閉症がある30代の男性が関東地方の総合病院に救急搬送され、その日のうちに亡くなった。母親の入院を機に居場所を失い、約1カ月の間に9カ所のショートステイ(SS)施設をたらい回しにされていた。急病で倒れて意識を失い、帰らぬ人となった。相模原の障害者施設殺傷事件から3年以上がたったが、重症心身障害者の娘がいる新井たかねさん(73)は「地域で追い込まれている障害者と親の現状にも目を向けてほしい」と訴えている。

 亡くなった男性の支援者は「相当なストレスがかかった。本来はもっと生きられたはずだ」。急に入れるSS施設は少なく、行動障害があった男性は敬遠されがちだった。

 家族任せの福祉

 「自己責任」で家族が探し、送迎もしなくてはならない。支援者が奔走してようやく受け入れ先が見つかっても、距離が遠く、車で200キロ移動した日もあったという。

 本来は家族の病気や外出の際に短期で使われるSS施設。国は連続30日までとしているが、福祉現場では行き場がないまま転々とせざるを得ない「ロングショート」が問題化しつつあり、その期間が半年を超えるケースも珍しくないという。

 男性の支援者は「入院先で息子の死を知った母は、たまらなかったと思う。日本の福祉が家族任せで、公的資源が地域に乏しいから起きた悲劇だ。命が軽く扱われている」と憤る。深刻なのは、ロングショートの背景にある「老障介護」の問題だという。

 「病気にもなれない」

 新井さんの紹介で、重度の知的障害のある実子が今春、地元の新たな施設に入所したという2人の友人に話を聴いた。富田陽子さん(76)は20年前、1カ月ほど頭に刺すような痛みがあったが、娘の真由美さん(46)の介護を優先して我慢していた。

 限界に達し、病院に行くと、医師から即日入院を命じられた。脳腫瘍だった。約40日に及ぶ入院期間中、誰が娘の世話をするのか。2日間の猶予をもらい、何とか親族に頼めたが「崖っぷちですよ。病気にもなれません」と振り返る。

 9割が主に母親

 福田光子さん(72)は自身の体調不良で長男、政道さん(46)の入所を相談した約1年前、行政側の言葉に絶句した。「北海道なら空いてますが」。その場合、会いに行ける体力はもうない。生き別れか…。目の前が真っ暗になった。

 入所施設は、待機待ちが大勢いるケースも多い。福田さんは「うちは近くに入所できたけど、もっと困っている人がいると思うと複雑です」と涙を流した。

 新井さんが関わった障害者の在宅介護の状況に関する実態調査によると、「主たる介護者」の9割が母親。就労機会を奪われ、経済的困窮にも陥りがちだ。相模原殺傷事件から3年以上がたったが、障害者福祉の現状は、事件を機に理解が進むどころか、むしろ後退しているのではなかろうか。

                   ◇

【用語解説】老障介護

 高齢化した親が、障害のある子供の介護を続けている状態。親が自分の親世代の介護も担う「ダブル」や、配偶者なども加わる「トリプル」の状態も起きている。「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会」(障全協)が平成26、27年に行った介護者に関する調査では、50代の障害者を介護する人の平均年齢は74歳。4割以上が肩や腰の痛み、体の衰えや疲労を感じていると回答した。

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