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【ハイ檀です!】車窓によせて

梅の種で割れてしまった車の窓ガラス
梅の種で割れてしまった車の窓ガラス

 台風8号は、九州を縦断して去っていった。驚いたのは、台風8号が運んで来た雨の勢い。我が家は高台に位置するため、目の前に落ちてくる雨の様子が、広重の浮世絵のように線状になって見えたのだ。しかも、風に煽(あお)られてその線がまるで生きもののように動くではないか。こうした、雨の威力には計り知れないものがある。大きな災害をもたらす場合もあるし、日照りに苦しんだ地域には恵の雨となる。八百万の神は、このあたりのことを平等にして頂けないものであろうか。

 今回の台風ではないが、我が家でも水不足には悩まされている。水道の恩恵でライフラインは確保出来ているが、井戸水の勢いがかなり減少している。井戸は、畑の作物や庭の芝生の散水用に、業者に依頼して60メートル掘って貰(もら)った。数年の間は勢いよく水が出てくれたものの、何年か続いた雨不足からだろう、地下水が減少しチョロチョロとしか出ない。近くの農家の方もまた、天を仰いで嘆いて居られたので、地下水が涸(か)れかけているのかも。

 という次第で、スプリンクラーで水が撒(ま)けなかったのか、芝生が枯れたかのように黄ばみ始めた。今回の台風ではないが、10日ほど前に大量に降ってくれた雨のお陰で、今は青々と蘇っている。が、たっぷりと水を吸収したからか、一夜にして数センチも伸びる始末。今度は、慌てて芝刈り作業となり、ガソリン駆動の草払い機を駆使し、庭の隅をトリミング。フラットで障害物のない場所は、これまた動力の芝刈り機に頼る。

 ところが、今回とんでもないことが生じた。毎年のように素晴らしい梅の実を供給してくれている梅の幹の根元を刈っていた際、ビシッという音がして愛車の窓ガラスが一瞬にして砕け散ってしまった。原因は、芝の中に隠れていた梅の種が弾かれ、ガラスを直撃したのである。実は我が愛車、数カ月前にも同じ箇所のガラスを破損した。この時は走行中に竹の枝が当たり、無残にも砕け散ってしまった次第。

 今回も前回も、交通事故による破損とは多少異なるものの、毎日のようにニュースでは高齢者の重大事故を取り上げている。確かに高齢者の事故は、加速度的に増えているようだ。このことは少子化問題とリンクしているから、単に免許の返納だけでは解決する問題ではない。例えば、僕が暮らしている離島のことを考えると、目の前には大都会である博多の街が見えている。しかも、フェリーに乗れば10分で都会の土が踏める。なのに、我が島は過疎の島。辛(つら)いのは、日用品を買い求める店が一軒もないこと。加えて、700人の島民の7割が、高齢者。

 島には、小中一貫教育という学校があり、バドミントンは福岡県内でも1、2を争う名門校となった。これが大きな宣伝に一役買ったのであろう、生徒の7割は島外の子供達。島には風俗はおろか、コンビニすら一軒もないから、環境的には大変に素晴らしい。そんなことで、フェリー通学を希望する子供も多いらしいが、全て受け入れる訳には行かないとのこと。

 このように辺鄙(へんぴ)な島であるから、送られてくる荷物は郵パック以外は全て渡船場に引き取りに行かねばならない。となると、どうしても車が必要となる。島には有名なお婆ちゃんが居られ、88歳になっても軽ワゴンを運転して荷物の送り出しをされている。島には、バスはあるものの、ほぼ観光用。オフシーズンには、ほとんど客がいないから時刻表もまばら。そんな訳で、島の大半の方々は軽トラか軽ワゴンに頼る他、暮らしを支える術はない。

 かくなる僕も、軽ワゴンのハンドルを握り、島のそこかしこに出向く。島には、信号というものは一つもない上、道幅は極端に狭い。島の周囲は、およそ10キロ近く。そんなことで、安全運転は絶対不可欠。だからだろう、事故の話は10年間暮らし、1回だけしか聞いてない。然(しか)し乍(なが)ら、僕も後期高齢者。来年の免許更新の際には、認知症の検査を受けなければならないし、運転の講習もある。

 という次第で、現在の段階では免許を返納してしまうと生活が成り立たない。愛車のサイドウィンドウが割れたことは、安全運転の警鐘と受け止めよう。島外で運転する場合には、更に細心の注意をしよう。だから、もう少しの間は、免許を取り上げないで欲しいと願うばかり…。

                   ◇

【プロフィル】だん・たろう

 1943年、作家・檀一雄氏の長男として東京に生まれる。CFプロデューサー、エッセイストとして活躍し、「新・檀流クッキング」などの著書多数。妹は女優の檀ふみさん。

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