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【黄門かわら版】水戸の夜、懐かしの野球談義

 水戸市大工町1丁目。交番そばに深夜営業の哀愁のラーメン屋がある。

 プロ野球のナイター中継があると、ほろ酔い観戦となる。テレビに近いカウンター席に初老の男性がいた。常連なのに常連ヅラしない。目が不自由なのか、画面に目を向けることはない。実況や打球音、歓声などを通じて、試合の状況をほぼ正確につかんでいた。

 筋金入りのオールドファンは、茨城県が「木内マジック」に沸いた1980年代の高校野球事情にも精通していた。野球離れが加速する中、酒場で野球談義ができるのは当然ながらここだけだった。

 少し前、店の入り口に「しばらくの間、休業させていただきます」と張り紙があった。単身赴任先の水戸で、何度も同じ光景を目にして言葉を失った。

 下町の路地・横町巡りを愛するエッセイスト、坂崎重盛さんも、人肌が感じられる横町の界隈(かいわい)がもろとも消えていく姿を目の当たりにしてきた。「心の底から思った。…だからこそ、残っている下町の名店には、いま行っておこう、通っておこう」と著書『東京煮込み横町評判記』のあとがきにつづった。

 店主の高齢化や人手不足、再開発によって小さな店が忽然(こつぜん)と消えていく。押し寄せる時代の波。見慣れた風景がこの先ずっと続く保証はどこにもない。油断ならない。歴史を刻んできた横町の灯が消えぬうちに足しげく通うしかない。さて、次はどの名店へ-。

(日出間和貴)

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