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【学芸員ミュージアム談義】県天心記念五浦美術館「近代陶芸の巨匠 板谷波山展」 検品通じ作家と向き合う 

「彩磁芭蕉蛙文花瓶」明治31~36年頃 板谷波山記念館蔵
「彩磁芭蕉蛙文花瓶」明治31~36年頃 板谷波山記念館蔵

 展覧会の開催には作品の借用が伴いますが、その際にキズや弱いところはないかなど作品の状態を詳しくチェックする検品という作業を行います。

 「近代陶芸の巨匠 板谷波山展」の作品借用を前に、展覧会担当の私は数日前からソワソワしていました。絵画に比べ、破損のリスクが大きい陶磁器を扱うという緊張感、文化勲章受章者によるあの美しい作品を目の前で見ることができるという期待感、いろいろな感情が押し寄せていました。

 そうして迎えた作品借用初日の板谷波山記念館。ここには、下館の生家や東京田端の工房が移築されています。制作途中の素焼きの作品や愛用の道具類が展示されており、すぐそばで波山が制作しているような錯覚に陥ります。

 この波山記念館から、どうしても拝借したかった作品の一つが「彩磁芭蕉蛙文)花瓶(さいじばしょうかえるもんかびん)」です。これは、波山が陶芸家としてデビューする以前の作品。一度壊れたこの作品は陶磁器専門の修復家によって蘇りました。その作品が目の前に置かれ、ドキドキしながら作品をのぞき込みます。

 花瓶全体に芭蕉の葉があしらわれ、花瓶の縁に三匹の蛙。動きも表情も一匹ずつ異なります。目をこすって眠そうにしている蛙もいます。この蛙たちの愛らしさに、思わず、検品しているという自分の立場も緊張感も忘れ、ただの波山ファンになってしまいます。美術館に展示される作品は、一定の距離から鑑賞しなければなりませんが、展覧会の担当はその貴重な作品を間近で見ることができるのです。緊張感が優越感に変わる瞬間です。(県天心記念五浦美術館首席学芸主事 富永京子)

 ■メモ「近代陶芸の巨匠 板谷波山展」は北茨城市大津町椿の同館で7月15日まで開催。月曜休館(ただし7月15日は開館)。

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