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【ぐんまアート散歩】アーツ前橋「近藤嘉男と憧れのヨーロッパ航路」

近藤嘉男「港のマリア」1950 年、油彩・キャンバス、アーツ前橋蔵
近藤嘉男「港のマリア」1950 年、油彩・キャンバス、アーツ前橋蔵

 ■地元の作家の実像、広く伝える

 美術館の肝はコレクション(収蔵品)である。ニュースになるなど注目されるのは往々にして華々しい企画展であるものの、それらを構成する作品も、どこかの美術館、企業、個人などが日々大切に収蔵・保管・管理しているものだ。

 そして特に公立美術館では、美術作品をはじめとする文化財を、市民共有の財産であり、未来に継承すべきものと考えている。だから、常設展やコレクション展といわれる収蔵品の展示を鑑賞することは、その美術館がどのような文化を現在そして未来のために検証し、伝えようとしているのか、そのビジョンの一端であり先端に触れることにほかならない。

 アーツ前橋(前橋市千代田町)で開催中の「近藤嘉男と憧れのヨーロッパ航路」は、前橋市出身の洋画家、近藤嘉男(1915~79年)に焦点をあてた展覧会だ。5回の渡欧を行ったという生涯に注目し、同館収蔵作品を中心に関係機関から借用した資料もまじえて画業を検証、紹介している。

 関連付けられて展示されている画家の高畑早苗と南城一夫の作品も含め、資料も合わせて29点という展示数は決して多くない。けれども、一点一点に丁寧な解説のつけられた展示は、近藤嘉男という地元の作家を市民に広く知ってもらおうとする確かな意志を感じさせ、引きこまれる。作品とともに目を通せば、画業はもちろんそれ以外の側面(生活や人となり)までも知ることができるだろう。

 たとえば、2度目の渡欧の理由として書かれている「一つは懸命に顧みてきた家庭の問題に見切りをつける契機として。二つ目は慢性的に服用していた睡眠薬とタバコを断って心身の健康を取り戻す契機として。そして、何もかも忘れて絵画制作に専念するための契機として、この旅は企画されました」という解説は、画家である前に私たち同様この土地で暮らす生活者であった近藤嘉男という人間の実像をイメージさせる生々しさがある。

 個人的に気にかかったのは「港のマリア」(1950年)だ。「都市風景のモンタージュ」と評されたと解説にあるその作品は、中央に女性と子供を大きく配し、複数の場面が組み合わされて画面を形作っている。

 連想するのは、同様に都市というモチーフやモンタージュという手法で作品を制作し、東京で活躍した松本竣介(1912~48年)である。近藤の意識下に松本の存在はあったろうか。あるいは共通する時代感覚によるものか。ちょうど桐生の大川美術館では松本竣介展を開催中だから、前橋から足を延ばして比較するのもいい。

 そういった勝手な類推を誘う、小規模ながら豊かな展覧会である。(太田市美術館・図書館学芸員 小金沢智)

                   

 「近藤嘉男と憧れのヨーロッパ航路」は24日まで、水曜休。午前11時~午後7時(入館は午後6時半まで)。無料。

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