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心と思い出、ずっとここに 岩手・大槌、姿消した旧庁舎

地震発生時刻に合わせ、遺族が大槌町旧役場庁舎跡の献花台に花を供えた=11日、岩手県大槌町(千葉元撮影)
地震発生時刻に合わせ、遺族が大槌町旧役場庁舎跡の献花台に花を供えた=11日、岩手県大槌町(千葉元撮影)

 強風で揺れる傘を大粒の雨がたたいた。津波で当時の町長や職員計28人が犠牲となった岩手県大槌町の旧役場庁舎跡。2カ月前まであった建物はなく、更地に地蔵と献花台だけが残る。それでも人々は集い、犠牲になった職員らを悼んだ。

 11日午前8時、町が開いた職員の追悼式。平野公三町長と町幹部に加え、今年初めて出席を呼びかけた職員遺族の姿もあった。黙祷(もくとう)の後、献花が行われ、平野町長は「みなさんは町職員として最後まで生き抜いた。ともに思い描いた町の未来の姿の実現に向けて町民と頑張っていく。はるか空のかなたから見守っていてください」と述べた。

 町職員だった兄の健さん=当時(30)=が行方不明の倉堀康さん(35)は追悼式に出席した。「職員は頑張った。弔うためにきた」。葛藤した8年だった。庁舎解体についても思いは揺れた。「今でも兄は解体を望んでいるのかと考える」という。

 それでも、「新しい出会いや教えがあった。つらいこともあったが、地元に残ったからには伝えていかなければならないことがある」と話した。

 一輪の花を手に庁舎跡を訪れた女性は「あの日を片時も忘れたことはない。庁舎がなくなり、新しい町になっても、心と思い出はずっとここにある」。時が過ぎても友人との離別の悲しみは変わらない。「時間は関係ない。だって、あのときもっとこうしてればよかったとか、あのとき…」。のどにつかえた言葉のかわりに、涙がこぼれた。

 午後2時46分には僧侶と遺族らが訪れた。遺族の女性は「8年だからといって改めて感じることはない。友人はここで亡くなった。だからここに来る。これからもずっと」と語った。

 現在の庁舎でも追悼式が営まれた。遺族代表の言葉を述べた上野拓也さん(41)は津波で父親を失った。8年たち、結婚して長男の蒼(そう)君(3)も生まれた。次の世代にも伝えようと、震災の話もする。「じいじは津波で流された」。3歳児なりに理解している。「震災でいったんゼロになった。よりよい町になってほしい」と上野さんは願っている。(千葉元)

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