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【ハイ檀です!】(162)何を食べるか 

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妻が作ってくれた特上のパンと卵。アレルギーで食せなくなるのであろうか
妻が作ってくれた特上のパンと卵。アレルギーで食せなくなるのであろうか

 60代の半ばを過ぎて、福岡市に住まいを移した。僕の母は、福岡生まれの福岡育ち。父は祖父の仕事の関係上、山梨県で生を受けたが、元々は柳川藩士の末裔(まつえい)で福岡県育ち。と言うことで、僕の本籍は長いこと福岡県柳川市大字沖端であった。祖父の住まいも、柳川の殿様の別邸である『御花』の掘割の袂(たもと)にあったし、菩提寺も柳川の福厳寺。

 恐らく父檀一雄が、作家という業を背負っていなければ、僕は柳川界隈の学校に通い、福岡市内で職を得ていたに相違ない。物心が付いた時点では、東京の練馬の暮らしだったがそれには抵抗はなかった。加えて、我が家には福岡出身の叔父叔母が、居候に近い状態だったのと、父の再婚相手が現在のみやま市出身だった為、家の中では博多弁に近い方言が、日常的に飛び交っていた。

 そうした背景から、父の終の棲家である能古島を、僕自身の最終の住居にすることには全く躊躇(ちゅうちょ)はなかった。が、妻はどうだったのであろうか、異存はなかったのであろうか。その辺りのことは、日本の亭主の悪い癖で、真意は確かめていない。ただ、昔から檀の家の人達の話していることの半分は理解出来ていない、と言っていたことを思い出すし、能古に移り住んだら周囲の人達の言葉が殆(ほとん)ど解らないとこぼしている。

 体の中に違和感を覚えつつ、よくぞ10年間も耐えてくれたと、感謝と敬服以外の何ものもない。最近はイノシシが食料を漁りに来るので、ゴミ出しも集荷トラックが来る寸前にしか道路には運べない。ポリバケツに生ゴミが入っていると、イノシシとカラスが現れて、バケツをひっくり返すのは必定。そこで、週に2回は早朝の5時半に起きてゴミバケツを所定の場所に運ぶ。半年ほど前までは、前夜にバケツを置いておけば問題はなかったが、イノシシ奴が学習をしてカレンダーを読むようになり、妻の仕事が急増した。

 妻の日課は早朝から深夜に及ぶのは常。かつての僕は、自分の仕事にだけ専念し、家庭内のことは全て妻に委ねるという典型的な日本の亭主だった。が、博多湾の離島に移り住み、抱えていた仕事から少しずつ離れるにつれ、妻の孤軍奮闘ぶりが否が応でも目に入る。そこで、即戦力にはならぬだろうが、気付いたことから僕の日課に加えることを決意。僕の職業はプロデューサーだったので、仕事柄、思いついたことをスタッフに指示して、事を解決していた。つまり口だけ動かしていたのであった。

 そこで、妻に頼り切りの生活から少しでも脱却する為に、70歳を過ぎた頃から積極的に暮らしを改善しよう、と、遅ればせながら発奮した。が、好事魔多しの例え通り、そんな時に腹部大動脈瘤(りゅう)が見つかる、その定期検診の際、今度は右肺が真っ白に。間質性肺炎であった。その治療を終え、定期的に夫婦で診察をしてもらう目的で、スポーツクラブならぬ医療クラブに入会。途端、右肺にまたもや異常が見つかる。肺ガンを覚悟して手術して組織検査、結果は幼少の頃の肺結核の感染。1年近く大量の薬を処方され、無事に薬から解放されたら、今度は左肺の上葉部分にガンらしき影が。

 再び入院して、左肺の上葉を切除。ステージ1になるかならないガンが見つかる。このオペの際、反回神経に触れたようで声帯が麻痺し声が出せない。そこで、半年後に声帯にシリコンを入れて、何とか声が復活するも後期高齢者に。そして先月、腹部大動脈瘤が5センチになったので、ステントグラフトの挿入手術。手術を無事済ませ、万々歳の筈(はず)であったが、急にジンマシンを発症。皮膚科にて血液検査をすると、多くの物質がアレルギーの要注意。小麦がひどく、スギ、ヨモギ、エビ等々…。中でも辛いのが、イヌ皮屑(ひくず)という項目が。どうやら、愛犬とベタベタするのは好ましくないようだ。

 と、諸々の食べものに制限がかかると、妻にまたもや負担が懸かることは明白。辛いのは、彼女が焼いてくれる特上のパンを、制限しなくてはならぬのであろうか。ともあれ、この1年位の間皮膚と腸に異常を感じていたのは事実。多少の痒(かゆ)みを覚えたり、腹を下し易かった。これが、アレルギーだったのか。早急に結論は出せそうにもないが、日々食べものとアレルギーの原因とされているものと真摯(しんし)に向き合いながら、僕自身で答えを出すしか術はないだろう。

                   ◇

【プロフィル】だん・たろう

 1943年、作家・檀一雄氏の長男として東京に生まれる。CFプロデューサー、エッセイストとして活躍し、「新・檀流クッキング」などの著書多数。妹は女優の檀ふみさん。

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