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エンジニアの着眼で家具に新風 「すまうと」の野木村代表、静岡市で起業

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 ■座禅の姿勢になる椅子/軽い杉材を活用

 何げなく腰を下ろすと、骨盤が前傾し、スッと背筋が伸びる-。「座禅の姿勢を自然に作れるように設計した椅子です」と話すのは家具の製作・デザインを行う「すまうと」(静岡市葵区)代表の野木村敦史さん(49)。東京都日野市出身の元エンジニアで家具作りに関心を持ち、静岡市内で起業。従来の職人にはない独自の視点で静岡伝統の家具作りに新たな風を吹き込んでいる。(石原颯)

                  ◇

 「人の体も構造。構造を読み取るという意味ではエンジニアリングと同じ」

 独自に開発した椅子は、座る部分を臀部(でんぶ)の形に合わせたデザインでやや前傾し、椅子に座ると自然に背筋が伸びるように設計されている。

 野木村さんは「日本人が椅子に座るようになったのは明治維新以降。西洋の椅子は一般的な日本人の体には向いていない」と指摘。腰痛の原因の一つが椅子にあると判断し、検証した結果、座禅の際の姿勢に着目。日本人の体に合った椅子を生み出した。

 野木村さんは元々、大手ゼネコン関連会社に勤めていたエンジニア。1級建築士の資格を持ち、サラリーマン時代はマンションや立体駐車場など大型建造物の強度設計などを担当していた。「頭で作るものづくりだけではなく、手で作るものづくりにも興味があった」と複数の選択肢を模索。その中で「大型建造物や自動車にはデザイナーと職人の間にエンジニアが必ず介在する。でも木工家具にはなかった。入り込む余地がある世界では」と未知の世界に飛び込んだ。

 平成12年に脱サラ。専門学校を経て、全国有数の家具生産地である静岡でもまれたいと、静岡市内の家具メーカーで4年間、職人として修業した後、18年に独立した。

 野木村さんの得意分野が強く生かされているのが杉材を活用した家具。杉材は家具業界では密度が低く、強度が足りないとの理由から、椅子や机といった家具ではほとんど利用されてこなかった。

 ただ、「住宅には杉材を使っている。強度が出ないはずはない」と業界のタブーに挑戦。研究を重ねた結果、金具などを活用してあらかじめ力を加えて安定させる斬新な方法を開発した。「杉材は弱いのではない。強度の出し方にクセがあり、圧縮する方向に力を加えれば強度は高くなる」。エンジニアだからこその着眼点で杉材の軽さを残した丈夫な椅子の生産に成功した。

 自らの事務所を“研究できる場所”にすることを一つのテーマに掲げる野木村さん。今回、静岡大と共同で、特殊な接着方法を用いて比較的強度が高い桜材など3~4ミリ程度の薄い板で杉材を挟み込む「サンドイッチ構造」を開発し、特許を取得した。「(杉材は)軽くて、湿気の吸収性が高い。人の肌に触れるのに適した素材だ」と杉材にこだわる理由を説明する。

 野木村さんが現在、着目しているのが「家具と健康の関係」。座禅の姿勢が自然に組める椅子もこの文脈から生まれたものだ。次に見据えるのが杉が持つ香りの成分。「ベッドを杉材で作ることができれば、杉の持つ鎮静効果が生かせ、安眠につながるのではないか」。家具業界にさらなる“イノベーション”を起こすべく、日々探求を続けている。

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