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【かながわ美の手帖】北鎌倉葉祥明美術館「葉祥明ハートフルメッセージ絵本原画展『リトルブッダ』」

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 ■始まりは1枚の絵 穏やかな「気付き」

 「葉祥明(よう・しょうめい)ハートフルメッセージ絵本原画展『リトルブッダ』」が北鎌倉葉祥明美術館で開かれている。葉が絵本『リトルブッダ』(佼成出版社)を手がけたのは平成8年。ブッダを描いたイタリア人監督の映画がきっかけとなった。「先を越された。私たちこそが仏教をこんな風に現代的にセンス良く表現しなくてはいけなかった」。口惜しさをベースに“命の尊さ”を優しい水彩で描いた葉。その「センス」を確かめるいい機会ともなっている。

 ◆映画との違い

 6年に日本公開された映画「リトル・ブッダ」はイタリアの巨匠監督、ベルナルド・ベルトルッチ(昨年11月に77歳で死去)の作品。彼が1990年前後、「ラストエンペラー」「シェルタリング・スカイ」に続き“東洋三部作”の1本として撮った。音楽は3本とも坂本龍一が担当している。

 映画は現代米国の少年がチベット仏教の高僧の生まれ変わりではないかと告げられ、ブータンに旅立つ。

 壮大なファンタジーで、並行してキアヌ・リーブス扮(ふん)するシッダールタ王子(ブッダ)の半生が劇中劇で描かれていた。

 葉は映画を見た後、絵を1枚描いた。〈大きな菩提樹(ぼだいじゅ)の下で、小さなお釈迦(しゃか)さまが一人瞑想(めいそう)している〉淡いパステル調の絵。〈どこか清々(すがすが)しく、聖なる感じ〉が自分でも気に入った。だが、1枚の絵からイメージを広げて十数ページの絵本にする作業は、容易ではなかった。

 試行錯誤の末、伝記的な話ではなく、〈まったくオリジナルな発想で、「ブッダの心」を表現する〉方法をとった。

 “リトルブッダ”の意味も〈幼少のお釈迦さま、そして私達と全ての中にある、まだ表に現れていない「仏性」〉としてとらえた。〈そこが、映画「リトル・ブッダ」との違い〉と、葉は後日、経緯について記している。最初に描いた1枚の絵は、そのまま絵本の表紙に使った。

 ◆一番好きな青

 〈自分と世界の一体感を取り戻す〉ために、〈私は絵を描き、詩を書き、皆と語り合い、『リトルブッダ』という絵本を作った〉と葉。彼の絵は文字通り「ハートフルメッセージ」にあふれているが、決して主張はしない。

 見る者の心のどこかに眠っている何かに気付かせてくれる。優しさとか、思いやりの気持ちとか。また、葉の絵は、とりわけ青の透明感が際立っている。

 海、空、宇宙…。自身も一番好きな色だという。きれいに見せることに心を砕き、発色をよくする工夫をさまざまに施している。

 1枚の絵にいろいろな色を入れたり、多くの色を混ぜて濁らせたりはしない。全てを飲み込んでしまう黒は極力使わない。

 「心が穏やかになる、相手を受け入れる絵でありたいというのが葉の願い。だからシンプルな、どこにでもある風景、親しみの持てる、落ち着いた、穏やかな絵になっている」と同館学芸員の長井香奈は語った。 =敬称略 (山根聡)

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 「葉祥明ハートフルメッセージ絵本原画展『リトルブッダ』」は北鎌倉葉祥明美術館(鎌倉市山ノ内318の4)で3月15日まで。午前10時から午後5時(入館は午後4時半まで)。年中無休。入館料は大人600円ほか。3月9日午後2時から同館で「浄智寺住職・朝比奈恵温氏が語る御仏の心と絵本『リトルブッダ』」を開催(入館料のみ、午後3時まで)。問い合わせは同館(0467・24・4860)。

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 ◆北鎌倉葉祥明美術館 絵本作家、画家、詩人の葉祥明(昭和21年、熊本市生まれ)が平成3年、北鎌倉の円覚寺や明月院の近くに開設した個人美術館。「それ自体が一冊の“絵本”のように」と、お父さん、お母さん、10歳のリラちゃん、5歳のクロード君の家族4人が住んでいた洋館という想定で建てられた。企画展示は居間で行っている。お父さんの書斎、子供部屋などもある。14年には熊本県南阿蘇村に姉妹館「葉祥明阿蘇高原絵本美術館」が開館された。

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