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【ズーム東北】宮城発 南三陸地域イヌワシの生息環境再生 官民で餌狩り場創出へ

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 宮城県の石巻市や登米市、南三陸町など南三陸地域で、絶滅が危惧される国の天然記念物「イヌワシ」の生息環境を再生させようというプロジェクトが、4月から本格的に始動する。同地域の翁(おきな)倉(ぐら)山(532メートル)はイヌワシの繁殖地として知られてきたが、近年は雄と雌の「つがい」を見ることはなくなった。そこでイヌワシを呼び戻そうと、翁倉山周辺の森林を管理する行政と民間が連携して森林計画を策定、餌の狩り場の創出に取り組む。 (石崎慶一)

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 日本自然保護協会によると、現在、国内に生息しているイヌワシは500羽ほどで、この約30年間で全てのつがいの約3割が消滅するなど絶滅の危機にある。

 ◆つがい激減

 原因の一つにイヌワシがノウサギなどの餌を獲るための狩り場が減少したことが指摘されている。イヌワシは翼を広げると約2メートルの大きさとなり、狩りをするには草地や伐採跡地といった開けた環境が必要となる。だが木材価格の低下などにより、人工林が伐採されなくなり、手入れが行き届かなくなったことで山が木々で覆われ、生息環境が悪化したとみられている。

 南三陸地域では、平成21年まで4つがいのイヌワシの生息が確認されていたが、24年までに3つがいが消滅、危機的状況にある。

 プロジェクトは27年に発足。南三陸町の「南三陸ネイチャーセンター友の会」の鈴木卓也会長(47)が「翁倉山域では23年2月以降、つがいの姿を見なくなった。イヌワシは町のシンボル(町鳥)でもあり、戻さなければ」と危機感を抱き、同町の林業会社「佐久」の専務、佐藤太一さん(34)らとプロジェクトの立ち上げに動いた。発足後、友の会や佐久、日本自然保護協会、林野庁東北森林管理局などが協力、イヌワシの生息環境の再生に向けたフォーラム開催などの活動を行ってきた。

 ◆人工林を伐採

 森林計画の対象地域は、翁倉山から半径約10キロ圏内。一定範囲の人工林を全て伐採する皆伐と再造林を実施し、イヌワシが狩りができる環境を継続的に創出、繁殖地として再生させるのが目標だ。

 イヌワシの生息環境に配慮した内容を盛り込んだ森林計画について、対象地域で民有林を管理する佐久はすでに策定、国有林を管理する東北森林管理局は3月末までに策定し、4月から官民連携の取り組みが本格的にスタートする。南三陸町も町有林で策定する。

 佐久は、山の生態系を意識した管理を行うなど環境に配慮した林業に取り組んでいる。自然環境の保全と山林の伐採は対立すると考えられてきたが、佐藤さんは「林業の活性化と自然保護は両立することを示したい。イヌワシを守るということが木材の付加価値になるようなマーケットを育てることも大切」と語る。

 イヌワシの生息環境の改善では、群馬県みなかみ町の国有林で、人工林伐採によって狩り場を創出した事例がある。関東森林管理局時代に携わった東北森林管理局計画保全部の島内厚実部長は「全国各地の生息地では民有林と国有林が混在している」と生息環境の改善のため官民が連携した取り組みの必要性を説明。また官民連携により「伐採など森林内での作業を効率的に実施することが可能となる」とメリットを挙げる。

 「森林生態系の頂点に位置するイヌワシが戻ってくることは南三陸地域の自然の豊かさを示すことになる」と日本自然保護協会の出島誠一さん(43)は指摘。その上で「生息環境を改善することで、つがいが戻り、繁殖することができれば、絶滅から救う事例となる」と強調する。

 鈴木さんも「山でイヌワシが暮らせるようになることは、人間が森林を持続可能な形で使っていることの象徴となる」と語り、同じような取り組みが全国に広がることを期待する。

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