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「福島イノベーション・コースト構想」実証実験 理念と現実にギャップ

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 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故に見舞われ、なお復興途上にある福島県浜通り地域の再生をはかる「福島イノベーション・コースト構想」が、実証実験を加速させている。政府と県の研究会の提唱から5年、今では公道での自動運転技術やドローン輸送などを繰り返す。交通や物流の再建が課題の被災地には追い風だが、理念と現実には、ギャップもある。

 構想は平成26年6月、県と経産省などの職員による「福島・国際研究産業都市構想研究会」が、「廃炉へのチャレンジ」「新しい産業基盤の構築」を提唱して始まった。メンバーには当時、副知事だった内堀雅雄知事もいた。その後、政府の「構想推進会議」が設置され、議論が本格化する。

 ◆自動運転実用に期待

 浜通り地域で動き始めたのは翌27年。以来、実施された実証実験は累計で170件と年々、増えている。施設も「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市・浪江町)の32年度の全面開所、第1原発の燃料デブリ取り出しに関する研究施設「大熊分析・研究センター」などが整備された。

 実験の場はそこだけではなく「ロボット実証区域」に指定された市町村では市街地でも実験が行われている。目立つのが浪江町だ。

 同町は震災、津波で請戸地区などが甚大な被害を受け関連死を含め約600人が死亡(昨年9月現在)。さらに原発事故で29年3月まで全町避難を余儀なくされ、復興も途上だ。そんな町が今、公共交通機関の自動走行化試験の推進、食品・医薬品のドローン配送などの構想を掲げ積極的に実験の場を提供している。

 昨年12月には福島トヨペットとアプリ開発の会津ラボが自動運転技術の実証実験を行い、JR浪江駅と役場の往復2キロを移動、信号にもしっかり対応した。

 県ロボット産業推進室は「運転手不足と帰還者の運送手段確保は浜通りに共通した課題。自動運転実用化が有効な対策になれば」と期待を寄せる。町の帰還住民には車を持たない高齢者が多く、住民の足となる町営デマンドタクシーの利用者は、年間2千人以上という。2・52倍(昨年11月)という突出した有効求人倍率の浜通り地域の人手不足は明らかで、自動運転の実用化への期待は大きい。

 物流でも新たな試みが始まった。浪江郵便局と南相馬市の小高郵便局は昨年11月から業務用パンフレットなどの輸送にドローンを活用。客向けはまだだが、毎月第2、3週の火、水、木曜日に飛ばし、データは東京の日本郵便本社にリアルタイムで伝え、実用化に向け蓄積されている。

 ◆住民は実感薄く

 ただ住民の肌感覚は実用化を見渡す段階にはない。例えば浪江郵便局の担当者は「冬はドローンを飛ばせないこともある」という。ドローンの大敵は風。風速5メートルを超せば飛行を見合わせ、輸送が小規模なこともあり現段階では「特別便利になったわけではない」。浪江町の関係者も、実証実験を積み重ねた先に見える最新技術の活用は「将来のこと」と語り、イノベーションの熱気には、遠い。

 もちろん、実用化には膨大なノウハウの蓄積が不可欠だ。その意味で実証実験で南相馬を訪れた研究者や企業関係者が、年間4千人(29年度)いたのは悪い数字ではない。「研究者の間で『実験のしやすい地域』として、一定の評価を得つつある」(同室)

 浜通り地域で研究者らに不評なのは、一部で不通状態が続くJR常磐線など、交通インフラの未整備、雇いたくても帰還住民が少なく首都圏以上に深刻な人手不足などだ。海外の企業や研究者には、なお「放射線アレルギー」が残るという。結局、研究開発でネックになっているのは復興への基盤整備そのものと言えそうだ。 (内田優作)

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