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【山形発】戸沢村の蔵岡地区、ポンプ設置でも家屋浸水 水害対策で国と住民対立

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 昨年末現在で、人口4595人(1601世帯)の山形県戸沢村。このうち269人(83世帯)が暮らす蔵岡地区は毎年のように、最上川の支流、角間沢川の水害に見舞われてきた。昨年8月にも大きな被害に遭っており、その対策は急務だが、国が推奨する対策案は住民を納得させるものになっていない。いま、蔵岡地区の「安全」が問われている。(柏崎幸三)

 「水が上がってきたっ、水が上がるぞ」

 角間沢川の氾濫を住民は「水上がり」と呼んだ。里山と最上川に挟まれたこの地区の歴史は水上がりの歴史でもあった。大雨が降れば、2、3時間で水は地区に到達する。このため、畳や布団を上げる自助対策を取ってきた。

 だが、昨年8月の雨は違った。5日から6日にかけては、24時間降水量で最大366ミリ、30日には165ミリを記録。角間沢川は一気に氾濫し、住民に牙を剥いた。

 国が14億円かけて設置した排水ポンプは停電で稼働しなかった。稼働した場合も排水できず、8割が床上、床下浸水となった。住民は国への不信感を募らせた。排水ポンプを設置するにあたって、国土交通省新庄河川事務所は「これで水害の心配はなくなります」と、自信たっぷりに説明していたからだ。

 ◆輪中案を推奨

 今年1月20日、昨年8月の豪雨を受けて対策を話し合う住民説明会で国と県、戸沢村が提案したのは、住宅を土堤で囲み雨の流入を防ぐ2種類の輪中堤(わじゅうてい)▽角間沢川の水を分散させる放水路整備▽角間沢川上流から最上川に直接放流するトンネルの設置▽角間沢川河道の拡幅-など5案だった。

 なかでも国が推奨したのは工期が短く、安価な輪中案だった。

 報道陣から、「昨年、西日本豪雨など想定以上の雨が降った。この案は、国などが知見を集めた結果なのか」と質問が飛ぶと、県県土整備部の高橋英信河川課長は「いまの知見ではこれしかない。水田を遊水池にする案や住宅をかさ上げする案もあるが現実的ではない」と応じた。国土交通省新庄河川事務所の光永健男所長も「輪中堤ができれば住宅への浸水はなくなる」と述べた。

 排水ポンプは知見を集めた結果だった。そして輪中案も知見を集めた結果と国や県は主張した。しかし、住民を納得させるには至らなかった。

 ◆「樋管の復活を」

 蔵岡で長く暮らした経験から庄司馨さん(72)は、角間沢川を最上川につなぐ樋管の復活を訴える。国が老朽化を理由に廃止した樋管だった。今回の大雨でも樋管が残っていれば、角間沢川の水は排水ポンプで留まらずに何割かは最上川に流れたはずだったとみている。「樋管を復活すれば水害など起きない」という庄司さんの主張に、国側は「意見として聞いておきます」と答えるにとどまった。

 住民説明会で、8月の水害を「想定外の雨量」と繰り返す国に斎藤秀勝さん(54)は詰問した。

 「認識を訂正してほしい。水害は排水ポンプ前に下りたスクリーン(網)に土砂や木くずが詰まったのが原因だ」

 こうした質問にも国からは明確な回答がなかった。

 蔵岡地区の住民が求めているのは水害補償などではなく、「安全」だ。いつ、また大雨が地区を襲うかもしれない。だがその対策はまだ見えてきていない。

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