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【いの一番】「おねだり慣れ」から脱却を 農林水産業のチャレンジ後押し

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インタビューに応じる九州経済連合会の麻生泰会長=11日午前、福岡市早良区(中村雅和撮影)
インタビューに応じる九州経済連合会の麻生泰会長=11日午前、福岡市早良区(中村雅和撮影)

 □九州経済連合会・麻生泰会長(72)

 天皇陛下が譲位され、平成が終わる年です。

 昭和から平成への代替わりの頃は、家業(麻生セメント)の社長をしていました。その頃と比べ、わが国を取り巻く状況は大きく変わった。責任感、危機感はずっと強い。

 当時、世界の名目GDPに占める日本の割合は14%もあった。それが今や6%です。残念ながら、世界での日本のポジションは、低下を続けている。少子高齢化や、借金が収入の倍という政府の財務体質も問題です。

 それでも危機感がない。われわれ経済界にも責任があるが、やがて危機に気づかないまま死ぬ「ゆでガエル」になってしまう。

 日本を動かさないといけない。新しい発想、とがった人間やサービスを次々と生み出し、「さあ続け」となるモデルを、九州から作りたい。

 それが、九経連が掲げる「九州から日本を動かす」というミッションの意味です。会長就任から5年たちましたが、まだまだ動かしきれていない。危機感をもって、真剣にやらないといけない。

 ◆魅力を高める

 特に、第1次産業に力を入れる。

 農業従事者の平均年齢が60歳を超え、食料自給率がカロリーベースで38%という日本の状況は、危機的です。日本は人が減っていますが、世界全体をみれば人口は増え続けている。

 食料も燃料もない国がどうなるのか。今のままでは、本当に大変です。第1次産業の魅力を高め、若者が帰ってくる産業にしなければならない。

 九経連は平成27年8月に商社、九州農水産物直販(福岡市)を設立し、輸出に乗り出しました。昨年はブリの輸出を始めた。売り先も香港だけだったのが、シンガポールや台湾に広がった。売上高の年度目標、5億円は突破する見通しだ。

 軌道には乗ってきたが、まだまだ期待していたほどの上昇カーブではない。もっと売る力をつけなければいけない。

 今年、大きな売り先として中国が出てくるでしょう。

 中国は貿易不均衡を解消しようと、輸入を増やす方針がある。昨年11月に上海で催された国際輸入エキスポでは、習近平国家主席が、市場開放と輸入拡大を訴えた。

 経済的な結びつきによって、日本を自分の方に向かせたいとも考えているでしょう。

 昨年6月、九経連は中国・山東省の威海市と食品流通に関する覚書を交わした。その時、現地の関係者は「九州とのパイプをつくりたい」と言ってきた。

 米中貿易戦争の中で浮上した華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)の通信機器をめぐる問題もあります。このような話は、中国に進出した日本企業にとって影響は大きい。

 ただ、品物を売り切るビジネスモデルは、工場進出や投資に比べ、リスクは小さい。

 中国政府が教育で国民に「反日」をすり込んでも、観光で日本に来れば、「習ったことと違う」と日本ファンになる。食でも、味を覚えれば「こんなうまいもの食べたことない」と間違いなく買ってくれる。そこに政府のコントロールは利かない。中国がこちらを向いている間に、どれだけ積極的に売り込めるかが大事なのです。

 並行して、AI(人工知能)やICT(情報通信技術)を活用した「スマート農業」の実現も必要です。最新技術で労働負担を抑える。佐賀県のITベンチャー、オプティムが取り組むドローンを活用した稲作など、期待できる事例が、九州から生まれている。

 ◆ベトナム移住

 チャレンジを始めた若者も、増えてきました。九経連はこうした若者を、手助けします。

 例えば、福岡県みやこ町のある菊農家は、ベトナムで菊の生産に乗りだそうとしている。農家の後継ぎが、ベトナムへの移住まで考えている。ただ、現地で栽培するだけでなく、現地で教育したベトナム人労働者を、みやこ町の農場で働いてもらう計画だそうです。

 昨年3月、九経連としてベトナムを訪問する直前に、この取り組みを耳にした。私は実際に農園に行って、ベトナムでの土地取引の悩みや、インフラ整備などの要望を聞いた。要望はベトナム政府要人にきちんと伝え、前向きな反応を得ました。今後、事業が順調に進むことを期待したいですね。

 鹿児島県の知覧茶の農家でも、後継者がベトナムに行くと言っている。こうした事業が軌道に乗れば、後に続こうと思う人も増えるでしょう。

 チャレンジは国内でも生まれている。

 ある林業家から、急斜面でなく、手入れのしやすい平地の休耕田で仕事をするという構想を聞きました。センダンの木を植え、材木になるまでの30年間は養蜂業で収入を得る計画です。こんな元気な人がたくさん出てくると第1次産業は活気づきます。九経連として、引き続き応援したい。

 ◆「昔はよかった」

 今年10月に予定されている消費税増税は、必要だと思っています。

 日本は個人資産が1600兆円あり、上場企業も借金以上に預金を持っているという信用があるから、今は良い。ですが、この信用が失われると、日本経済は取り返しのつかないダメージを受ける。

 政府は、平成26年の前回引き上げの経験を生かし、消費が落ち込まないような対策を出している。

 しかし、緩和策だけではなく、歳出カットを考えないといけない。

 今、世の中は「おねだり慣れ」してしまっているように感じます。

 先般、ある大学の学長と会合で一緒になった時のことです。学長は、国から大学への補助金カットを問題視する発言をされた。

 「それは違うだろ」と、違和感を覚えました。

 大学は構造不況です。少子化の一方で、学校数が増えている。これから再編が進まざるを得ない。学長の仕事は、どうやって勝ち組に入るかを考えることです。補助金というイージーな道を選んでは、いけない。

 大学に限りません。みんなが「ちょうだい、ちょうだい」になっている。

 そこから脱却して、チャレンジをしなければだめだ。

 最近、国際会議に参加すると、各国の人から「日本は昔、よかったよね」と過去形で語られることがある。

 「ふざけんなよ」と思います。日本は過去形ではない。

 今年は、そんな過去形を、はね返す1年にしたいです。そのためにも、行政でも経済界でも、リーダーがビジョンと志、使命感を持って、具体的に貢献することが重要です。(中村雅和)

                   ◇

 亥年の年頭、九州・山口をリードする経済人や経営者に、「いの一番」に訴えたい思いを聞いた。

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