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【Sounds 震災と東北の、おと】(1)酒を聴く 酵母が動き、元気が響く

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「櫂入れ」の作業をする杜氏の佐々木淳平さん。このとき、酵母の音が聞こえるという
「櫂入れ」の作業をする杜氏の佐々木淳平さん。このとき、酵母の音が聞こえるという

 酒造り。それは微生物との細やかなやり取り。生き物は動けば、音をたてる。杜氏(とうじ)は感性を研ぎ澄まして、酒の状態をきき、判断する。酒造りに「教科書」はない。杜氏は経験からつかんだ感覚だけを頼りに、酒を生む。

 宮城県名取市閖上地区。閖上は漁業の町だった。大漁旗をたなびかせ、漁船が港に帰ってくる音、それはこの町に幸福をもたらす音。福音。「ザザー」と穏やかな波の音も。そんな波の音は夜になり、寝静まった町に「ゴーゴー」と響く。町は海が奏でる音とともにあった。

 佐々木酒造店は明治4(1871)年から、この場所で酒を造り続けてきた。地酒はその土地の人々がたしなむ。閖上では漁師だ。海の男たちが酔い、宴に興じる。だから、地酒は「宝船 浪の音」と名付けられた。

 いま、閖上の町には復興工事の重機の音が響く。佐々木酒造店があった名取川河口近くも例外ではない。あたり一面は、更地に近い土地だ。

 東日本大震災の津波は各地に壊滅的な被害を及ぼした。700人以上の人命が、ここだけで失われた。

 佐々木酒造店の専務、佐々木洋さん(42)は揺れが襲った瞬間、いてもたってもいられず、会議で訪れていた場所から、酒蔵の状況を確認しに行った。

 「津波だ」

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