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【年の瀬記者ノート】変わる放射線教育 風評や偏見どう乗り越えるか    

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 9月、福島県の原発事故被災地をめぐる米国のインターネット番組が問題になった。

 「被曝(ひばく)した食材かも」

 浪江町の食堂でニュージーランド人記者に出された定食を前に、そんな字幕が流れ、「汚染があったとしても、うまい」という日本語の音声が続いた。県内の環境を過剰に危険視している。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からまもなく8年。日本酒、コメ、モモに福島牛。県を先頭に、県産品の風評被害払拭と販売拡張に力を入れた1年だった。しかし、冒頭のような根拠なき風評が今もつきまとう。

 SNS上にも「福島産は危ない」「子供には食べさせるべきではない」との表現が、まだ散見される。実際は県が市町村別に農水産物の放射線モニタリング検査を行い、JAや漁協も自主的に調べ厳格に安全性が確保されている。

 心ない風評の背後には、多くの場合、現状への理解不足がある。重要なのは知ることなのだ。その意味で、10月に福島市内の小学校で行われた放射線教育の授業は示唆に富んでいた。

 福島市は平成24年度から学校での放射線教育を始め、小学校で年間2時間、中学校では3時間、放射線の人体への影響やエネルギー問題などについて授業を重ねてきた。しかし、〈どうすれば被曝量を減らせるか〉といった技術的な内容だった当初の授業は、大きく変わったという。

 授業を見て、実感した。

 5年生のクラス。テーマは「福島の放射線について調べたことを、福島をよく知らない人に伝える」。4、5人の班がパンフレットを制作した。「放射線と福島の農産物」を題材にした児童は、完成前の折りたたんだ白い紙を手に「このページには震災の被害を、このページには地図を、後ろには風評について書きたい」「線量がどう減ったのかも伝えたい」。編集方針は多様だった。

 授業のコマ数は当初と変わらないが、今年の5年生は30時間近くを事前学習に費やしたという。

 廊下には児童が調べたリポートも掲示され、「内部被曝と外部被曝の違い」「放射能の持つ影響」などのテーマが並ぶ。授業の締めくくりで教師が感想を求めると、男子児童が手を挙げ、キッパリ語った。

 「福島を風評で差別する人にパンフを見てほしい」

 福島市教育委員会の羽田晃教育研修課長は、発災からの歳月は福島にも「震災を知らない子供たち」を生み、小学校に進学するようになったと指摘する。

 その上で、「福島ではこれから何十年も廃炉に向けた歩みが続く。そして偏見も同様に続くはず。その中で、どう考え、判断するか。主体性を育てることが重要だと思う」と、進化する教育プログラムの意義を強調した。

 震災や事故からどう身を守るかから、風評や偏見をどう乗り越えていくか。福島で生まれ、これからを生きる世代にとって自分で調べ、考え、発信する教育が持つ力は大きい。(内田優作)

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