PR

地方 地方

【年の瀬記者ノート】青森発 米軍機、小川原湖に燃料タンク投棄 海自の高い即応能力を痛感

Messenger

 “宝の湖”に衝撃が走った-。2月20日、米軍三沢基地(三沢市)所属のF16戦闘機が離陸直後にエンジン火災を起こし、基地近くの小川原湖(東北町)に燃料タンク2個を投棄した問題。当時、湖ではシジミ漁の船が操業中で、一歩間違えると大惨事になりかねなかった。事故から約1カ月で漁は再開されたが、海上自衛隊大湊水中処分隊(むつ市)の献身的な任務なくして事態収拾はなかった。

 小川原湖は国内有数のシジミの産地で、年平均の漁獲量は約1200トンを誇る。さらに、天然ニホンウナギやワカサギ、シラウオなどの漁獲量も豊富で「宝湖(たからぬま)」と親しまれている。

 小川原湖漁協によると事故当時、約100隻が操業しており、タンクが落ちた湖の南側の現場付近では4、5隻が漁をしていた。事態を重くみた県は、自衛隊に災害派遣を要請。小野寺五典防衛相(当時)は「本来、米軍が回収する案件だが、米側から自衛隊にお願いできないかと要請があった」と説明したが、米軍の後始末を自衛隊が行うことに釈然としなかった住民は多かった。とはいえ、禁漁期間が長引けば死活問題に関わってくる。

 翌21日から同隊が潜水作業によるタンクの回収に当たり、発生から約2週間で90%以上(重量換算)の残骸を回収、3月20日に安全宣言が出され、同22日からシジミ漁が再開された。

 「厳寒の中での作業となったが漁協、地域住民のおもてなしに任務遂行の気概がわいた」

 日頃から機雷処理を想定した厳しい訓練を行っている隊員にとっても慎重な作業だったが、陣頭指揮を執った上田晃平隊長(当時)は「日頃の訓練のたまもの」と当時を振り返った。高い即応態勢を裏付ける任務だったと言える。完璧な仕事で住民の不安を取り除き、対米軍感情の悪化も最小限に抑えたことも大きい。

 自衛隊の献身的な仕事ぶりに住民も温かいシジミ汁を差し入れるなど、心を込めてもてなした。自衛隊と住民が心を一つにし、地域の貴重な財産が守られた。

 事故原因は、エンジンに誤って取り付けられた旧式部品が飛行中に破損、出火したためとされた。相次ぐ米軍機のトラブルに国民の不信感は高まっており、米軍には誠実な対応と再発防止策の徹底が求められる。損害賠償に関しても漁協は、日米両政府に約9300万円を請求していたが、約8500万円を支払うことで合意。組合員の一人は取材に「満額回答ではないが、生活のことを考えればやむを得ない」と複雑な心境を吐露した。

 大規模災害時は言うに及ばず、今回の問題でも改めて自衛隊の対処能力の高さと必要不可欠な存在であることを痛感した。にもかかわらず、憲法9条への自衛隊明記など、改憲をめぐる国会の議論は遅々として進んでいない。「自衛隊=戦争」と安易に結び付けるのはナンセンスだ。我々は自衛隊の存在意義を真摯(しんし)に考える必要がある。(福田徳行)

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ