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九電、情報セキュリティーを収益に サイバー攻撃の防御ノウハウ活用

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 九州電力が機密文書の保管・処分やコンピューターネットワークの安全性確保など、「情報セキュリティー」を合言葉とした事業拡大に、グループを挙げて取り組んでいる。サイバー攻撃の標的となったことで否応(いやおう)なしに培ってきた防御ノウハウなど、電力の安定供給を支えてきた技術を経営資源として、外部への売り込みを図る。(中村雅和)

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 「紙のカルテの時代じゃないんです。書類の廃棄よりも、サイバーセキュリティーの方が心配です」

 九電上席執行役員の長野(ちょうの)益徳氏は昨年秋、福岡県内の私立病院の幹部から、こう打ち明けられた。

 長野氏は、九電子会社で機密書類の保管・廃棄などを手がける「記録情報マネジメント」の社長も務める。病院には、カルテなど機密書類の取り扱いに関する商談に訪れていた。

 だが、病院側から聞いたのは、カルテはすでに電子化しており、そのセキュリティーへの懸念だった。

 「九電グループはセキュリティー全般のノウハウが豊富です。デジタル分野のセキュリティーに取り組む会社もあります」

 長野氏は帰社後、通信事業の子会社「QTnet(キューティーネット)」の担当者らに連絡を入れた。

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 インターネットが全世界を覆う現在、各国の公的機関やインフラ企業は、コンピューターウイルスなどによって、絶え間ない攻撃にさらされる。システムダウンだけでなく、誤作動を狙う攻撃者もいる。

 サイバー空間は「陸海空に続く戦場」と称される。

 九電へのサイバー攻撃は平成29年度、数千万件に達した。攻撃は年々激化しており、本年度の件数は億単位となる可能性も大きい。

 人々の生活を支える電力網を、停止させるわけにいかない。九電はこうしたサイバー攻撃を、水際で食い止めてきた。同社幹部は「サイバー分野の防御では、日本の企業でも有数の技術を持つ」と自負する。

 その技術が、商売の種となった。

 中小も含めた企業にとって、サイバー攻撃への防御が、大きな経営課題となっているからだ。NPO法人「日本ネットワークセキュリティ協会」が今年6月に発表した報告書によると、平成29年の1年間で、サイバー攻撃などによる国内の個人情報漏洩(ろうえい)件数は、延べ約520万人分に達した。想定損害賠償額は1914億円だった。

 九電グループは現在、総合的なサイバー防衛技術を提供する。通信回線やデータセンターなどハード面だけでなく、関係社員の教育なども含む。

 九電情報通信本部長の能見和司上席執行役員は「九電は日本で有数の攻撃対象だ。それを防ぎ続けてきたノウハウは、他社と大きな差別化を図れる。近いうちに億単位の売上高を実現したい」と語った。

 顧客開拓を目指して、能見氏が中心となり、QTnetなど関連4社の社長会議を、月1回のペースで開いている。

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 一方、長野氏が社長を務める記録情報マネジメントは、オフィスに機密文書の入れ物を設置し、定期的に回収、裁断・溶融する事業に取り組む。

 当初、取引先は銀行など大手企業だった。情報管理の重要性が高まる中で、中小企業にも普及した。現在の取引先は2千社に上る。

 九電は、デジタル・アナログひっくるめて、情報セキュリティー事業を、新たな柱にしようと取り組む。

 「あなたの会社の大事な情報資産、安全に守られていますか? 九電グループには電力関連事業で培った高い技術・ノウハウがあります」

 九電グループのサービスを紹介するパンフレットの平成30年度版では、巻頭特集に情報セキュリティー事業を取り上げた。

 九電は33(2021)年度までに、経常利益1100億円以上を目標に掲げた。だが、主力の電力事業は、自由化による激しい競争や、少子化による市場縮小に苦しむ。九電は、新規事業の開拓を進める。

 グループ企業が技術を蓄積したセキュリティー事業は、有望分野だといえる。加えて、セキュリティー事業でつかんだ顧客は、電力事業でも顧客になり得ると期待している。

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