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【埼玉県民の警察官】県警鑑識課・澤尻智警部補(55) 現場に向き合い正義貫く

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 現場に横たわる被害者の遺体にカメラのレンズを向けながら、心の中で固く誓う。「一日も早く、犯人を捕まえてやるからな」。遺留指紋や足跡の採取など鑑識作業を黙々とこなすが、被害者の無念さ、絶望のふちに追い込まれた遺族の心情に、思わず涙がこみあげてくるときもあった。

 寡黙だが、自身の使命を全うする-。そんなを気持ちで22年近く凄惨(せいさん)な現場に向き合い、手がかりとなる残された証拠を読み解き、事件・事故の解決に寄与してきた。

 父は消防士だった。幼少時代、消防士の制服は「正義」の象徴のように映り、高校卒業後に消防士の試験に挑戦したが、かなわなかった。2カ月後、就職した県内の小売業の職場に出勤する際、偶然、警察官募集のポスターを見つけた。「制服のある仕事に就きたい」と決断し、晴れて警察官の制服に袖を通した。

 子供の遺体に対面すると、自分の子供たちの表情がよぎる。「どうして数年しか生きられなかったのか」。犠牲になるのは弱い立場の人ばかり。子を持つ親の無念さが重なる場面が少なくない。

 応援に駆けつけた平成23年の東日本大震災で、遺体の確認作業にあたった岩手県釜石市でも、毛布に包まれた30歳前後の女性と、抱っこ紐(ひも)できつく結ばれた生後間もない赤ちゃんの母子の遺体が脳裏に焼き付いている。早く家族の元に帰してあげたい。その一心で遺体の確認作業を急いだ。

 常に証拠が摘発の決め手となるだけに、腕の見せどころといえる鑑識技術。仕事への情熱は胸に秘め、多くを語らないものの、警察学校で指導していた時代に1度だけ自分自身の経験を後輩に語ったことがある。

 「この道よりわれを活かす道なし」

 警察官になったばかりの数年間は刑事を志していたが、長く身を置いた鑑識畑が「活躍」の場となった。そんな意味を込め、あえて「生かす」ではなく「活かす」との表現にこだわる。

 「面と向かって伝えたことはないけれど、今までよくついてきてくれた」。長年支えてくれた家族。長女と次女はそろって県警に入った。「正義」の制服を着て、犠牲者の無念を晴らそうと奔走する父親の背中をみて育った。かつて自分が制服姿の父親を追いかけたように-。(飯嶋彩希)

                   ◇

【プロフィル】澤尻智

 さわじり・さとる 岩手県一戸町出身。大宮署や西入間署、飯能署鑑識主任などを経て現職。妻の行幸(みゆき)さん(50)とは職場結婚で、長男(26)、長女(24)、次女(19)と5人家族。表彰式当日は「家族全員が久しぶりにそろう意味でも楽しみ」という。

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