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東北3県境を目指して

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 ◆四角岳 沢たどり、斜面を登り

 すっかり深まった秋の夜長、あらためて東北地方の地図を眺めながら、つらつらと考えてみる。日本の2割ほどを占める6県の総面積。県内での移動すら、そう楽ではないけれど、そこに行きさえすれば、3県を股にかけられる場所があるようだ。そこから見える景色はどんなものだろう。東北総局の記者2人が、それぞれ北東北と南東北にある3県境に向かった。

 登山前日、万一に備えて登山計画書を書いた。目的地は四角岳(しかくだけ)。標高は1003メートルで、青森、秋田、岩手の3県境に位置する。交通手段と日程、登山ルートの略図を書いて岩手県警にファクスした。

 盛岡駅から車で東北道を走る。八幡平(はちまんたい)市の安代インターで降り、1時間半ほどで林道が現れた。道を確認しようと農作業中の女性に声をかける。「四角岳ね。よぐクマ出っから気ぃつけねばね」。11月1日に岩手県で今季のクマ猟が解禁されたばかりだ。

 「四角岳入口」と書かれた赤い看板の手前で車を止め、30分ほどで登山口にたどりつく。ここからは木につけられた赤い塗料だけが頼りだ。シラカバの幹には動物がかじったような跡が見られた。

 切り立った崖沿いの細道を歩き、沢を横切る。さらに2時間半ほど、背丈ほどの草木をかき分け、急斜面をよじ登ると、ちらほら白い雪が見えた。ゴールはそう遠くない。

 入口から約3時間半、山頂に着いた。息はあがり、汗まみれ。青森県田子(たっこ)町・秋田県鹿角市・岩手県八幡平市をまたぐ3県境の木標のそばに立つと、「やっと来たなあ」と自然と声が出た。

 慎重に下山するまでの行程、およそ6時間。思えば山中では誰ともすれ違わなかった。手つかずの静謐(せいひつ)な森の中、膝だけが静かに笑っていた。(千葉元)

                   ◇

 ◆龍ケ岳 陽光に紅葉のトンネル

 起床し、澄んだ青空に胸をなで下ろす。車に杖(つえ)代わりの棒を積んで、カーナビゲーションの目的地に「龍ケ岳」と打ち込んだ。

 仙台宮城インターから高速に乗り、福島飯坂インターで下りる。ほどなく細い山道に入った。道の両側は赤く染まった木々が続く。さながら「紅葉のトンネル」だ。

 約2時間で龍ケ岳の麓へ。「玉こんにゃく」を売っていた地元の男性に山の様子を尋ねてみた。

 「子供でも登れるよ。クマも出やしないよ」

 ちょっと拍子抜けしながら、ブーツのひもを結び直す。しばらく緩やかな山道とのどかな光景が続く。かつて牧草地だったという。

 中腹にさしかかると一転、傾斜が急になり、腰の高さほどの草が茂る獣道に分け入った。ここからは木にくくりつけられた赤いビニールひもが道標だ。持参した棒が役に立つ。

 視界が開ける。頂上。汗をぬぐい、山形の方を見やれば高畠町、福島の方は山並みが広がる。宮城側は生い茂る植物で眺望はいまひとつ。牧草地の名残を感じる原っぱで、しばし大の字に寝転び、大きく息を吸い込んでから、下山。3時間ほどの道中だった。

 帰路。「紅葉のトンネル」は夕日を浴び、朝とは違った表情を見せる。東北の晩秋、紅葉と絶景の記憶に後ろ髪を引かれながら、アクセルを踏み込んだ。(塔野岡剛)

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