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人材が集まる魅力づくりを 九大の伊都キャンパス移転今月末で完了

九州大学伊都キャンパス。9月末で移転が完了する
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 九州大学が9月末、伊都キャンパスへの全面移転を完了する。国内の大学は今、少子化の進展や世界的な大学間競争を背景に、研究と教育のバランスをどう取るかなど、将来像の構築を迫られている。九大が目指す世界水準の研究・教育拠点の実現には、国内外から優れた学生や研究者が集まる魅力づくりが欠かせない。 (高瀬真由子)

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 全面移転は平成3年に決定し、17年から順次進んだ。

 九大は移転先として、福岡市西区と福岡県糸島市にまたがる272ヘクタールの土地を確保した。1カ所のキャンパスとしては国内最大。福岡市とその周辺にある6拠点のうち、老朽化が進んでいた箱崎、六本松、原町地区の拠点を、伊都に集約。学生約1万5千人、教職員約3千人が通う。

 伊都では、次の時代を見据えた取り組みが始まった。広大な敷地を活用し、自動運転バスの実証実験が行われている。また、次世代エネルギーとして期待される水素を研究する世界有数の拠点も設けた。官民挙げた研究を、九大が牽(けん)引(いん)する。

 久保千春学長は今月12日の記者会見で「学生、教職員、地域が一体となり、研究、教育の世界的なハブに発展させたい」と述べた。

 ■遠い「100位」

 移転を決断した当時の学長、高橋良平氏は広報誌で「九州のリード校、アジアの拠点大学としての九大の責任は極めて重い。あらゆるソフト・ハードを持つには広く新しいキャンパスが必要で、手に入れるチャンスは今をおいてない」と記している。

 ただ、アジアの大学勢力図は、この20年で大きく変化した。

 英教育専門誌のタイムズ・ハイヤー・エデュケーションが昨年発表した世界大学ランキングで、日本から100位以内に入ったのは、東京大(46位)と京都大(74位)だけだった。ランキングは、論文引用頻度や国際性などを指標にしている。

 アジアのトップは、シンガポール国立大(22位)だった。さらに北京大(27位)、清華大(30位)と中国勢が上位に食い込む。九大は「351~400位」という位置付けだった。

 九大は、全ての分野で世界のトップ100大学入りを果たす「躍進百大」の実現を掲げる。実現には、研究、教育両面の強化が求められる。

 だが、環境は厳しい。

 ■少子化が襲う

 国内の18歳人口は減少を続ける。平成4年の205万人が、28年には119万人になった。52(2040)年には80万人にまで減少するとの推計もある。

 一方、28年の大学数は777校と、4年の523校から250校近く増加した。

 すでに地方の小規模私立大を中心に、経営悪化が深刻となった。全国で4割程度が定員割れに陥る。

 この少子化による経営難の波は今後、国立・公立大も襲う。

 文部科学省は、大学の統合・再編の制度づくりを進める。

 すでに動きは出る。北海道の帯広畜産大、小樽商科大、北見工業大の3国立大は今年5月、運営法人を統合すると発表した。統合目標は34年4月という。

 名古屋大と岐阜大、静岡大と浜松医大も運営法人の統合を検討する。

 九大をはじめとする九州の国公立大にも、統合・再編の圧力が迫る。

 ■研究時間短く

 九大は移転によって、広大な「未来型キャンパス」を手に入れた。半面、アクセスが大きな課題となる。

 伊都キャンパスは、交通の便が悪い。福岡の中心部である博多駅や天神から、公共交通機関で40~50分かかる。

 箱崎キャンパスで指導していた教授は「天神などでアルバイトをしている学生は、早めに大学を出なければならず、研究にかける時間が短くなる。長期的にみて、人材育成に影響が出るのではないか」と心配した。

 現在、日本では三大都市圏を中心に、大学の「都心回帰」が進む。交通の便の良い立地にキャンパスを設けることで、優秀な学生を集める狙いがある。企業や他大学との連携にも利点がある。九大は、この流れに逆行する。

 九大は明治44(1911)年に九州帝国大として創立した。107年間の歴史で、国内外の研究をリードし、人材を輩出した。次の100年、世界の拠点大学として、伊都の地から飛躍できるか。大きな岐路に立つ。

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 九大は29日、伊都キャンパスで完成記念式典を開き、キャンパスを開放する。「アカデミックフェスティバル」では、キャンパス内のバスツアーもある。

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