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名取・閖上に新たな観光資源 念願の温泉、交流人口拡大へ布石

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 東日本大震災で700人以上が犠牲になり、甚大な被害を受けた宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区で温泉の源泉が出た。同地区で温泉が出るのは初めて。同市が発表したもので、震災から7年半がたち、徐々に町の輪郭が見え始めてきた地区の新たな観光資源に、市は「交流人口の拡大に」と意気込んでいる。

 ◆1.2キロ掘り進め…

 温泉が出たのは4キロのコースを誇る東北唯一の自転車レクリエーション施設として名をはせた「サイクルスポーツセンター」。震災の津波により全壊の被害を受け、温泉施設の併設を視野に入れて、災害復旧工事が行われている。県内外の自転車愛好家が通い詰めた姿を取り戻そうと、平成32年秋のオープンを目指している。

 市では27年ごろから施設への魅力づくりや集客方法について、検討してきた。その中の一案が温泉施設の併設だった。

 「災害復旧を前提とした集客チャレンジ。できることとできないことを精査して総合的に判断した」

 同市の大久保啓二商工観光課長は説明する。

 29年8月から掘削工事を開始。今年3月、1200メートル地点まで掘り進め、源泉を発掘。5月には成分調査などを実施し、7月になって「温泉湧出地取得届」を県に提出し、受理された。

 「温泉が出るかでないか、工事の過程をどきどきしながら見守っていた」と、大久保課長はほっとしたように話した。

 ◆ネットで資金募る

 市は先月、この温泉を「名取ゆりあげ温泉」と命名したと発表した。温泉の温度は32・8度、湧出量は毎分20・6リットル。切り傷、冷え性、皮膚乾燥症、疲労回復に効能があるという。今後、「源泉が枯渇しないか」といった所定の審査を踏んでオープンすることになる。どのような温泉施設になるかは未定だが、市は湧出に夢を広げている。

 掘削工事費については、初めての取り組みとして、インターネット上で広く資金を募る「クラウドファンディング」を行った。震災伝承団体が建物の購入費をクラウドファンディングで募ったケースもあり、被災地でも注目を集めている。

 同課の浅野美保子課長補佐によると温泉の掘削工事には約1億円の費用がかかるといい、今回はその内の1千万円を目標に設定した。「1千万円以上が集まった。無事に温泉に入れる、となったあかつきには費用を出してくれたお礼に入浴券を配布する予定だ」と浅野さんは語る。

 ◆もう一足延ばして

 同地区ではサイクルスポーツセンター以外にも観光客を呼び込む施設のオープンが目白押しだ。

 日本最長のトレッキングコース「みちのく潮風トレイル」の管理拠点「名取トレイルセンター」、飲食店や物販店が建ち並ぶ「かわまちテラス」が、いずれも31年春にオープンする予定だ。

 大久保課長は「こうした施設を訪れる人が、もう一足延ばして温泉に入りに来てくれることで、人の回遊が活性化し、滞在時間が長くなるという相乗効果も期待できる」と話す。その上で、「閖上の復興を促進できるよう交流人口が増え、にぎわいを取り戻せればうれしい」と話した。

 被災地の課題となっているのは「交流人口拡大」。閖上では初めて湧いた温泉がひとつの鍵を握っている。 (塔野岡剛)

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