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こだわりの塩が地域再生 専売廃止20年、ブランド力アップ 長崎・五島は人気で製塩所増える

全国から集めた塩を手にする伊勢丹新宿店の調味料バイヤー、中本光昭氏
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 離島や過疎地で、製法にこだわった塩作りが静かに広がっている。生産・流通を国が管理した塩の専売制は、約20年前に廃止された。今や誰でも、最寄りの海からいくらでも生産できる。品質の安定化や販路開拓の難しさはあるが、移住者らも担い手となり、自然の恵みを地域の力に生かそうと奮闘する。

 長崎県・五島列島北部の新上五島町では、製塩所が増え、現在は10カ所以上だ。

 小川邦夫氏(56)は、釜で海水を炊く製法で1カ月に約100キロを生産する。もともと、自然豊かな離島暮らしに関心があり、20年ほど前に、熊本県から移住した。

 各地の同業者との競合も厳しい中、定期的に買うファンを確保し「ほそぼそとだが、島で暮らすのに十分な収入を得ている」という。

 五島近海の澄んだ海水を使った塩は、特産品としてブランド力を高める。地元の直販所では、海水塩そのものだけでなく、塩を使ったキャラメルや羊羹(ようかん)も人気を集める。

 また、上五島町の「矢堅目の塩本舗」では、海水を煮詰める工房の見学もある。

 瀬戸内海でも塩作りは盛んだ。美術作品が各所に置かれ、現代アートの島と称される豊島(香川県土庄町)では昨年1月、東京から移り住んだ門脇湖氏(48)が「てしま天日塩ファーム」を開いた。

 木造温室の中の木箱に海水をため、天日でゆっくりと1カ月以上かけて水分を飛ばし、塩を結晶化していく。天候や気温に左右され、粘り強さが求められる作業も多い。

 門脇氏の前職は東京のラジオ局ディレクターだった。島の美しさにほれ込み、夫婦で新天地に飛び込んだ。「太陽と風の力だけで作った自然塩のおいしさを、多くの人に伝えていきたい」と話した。

 島や沿岸部にとどまらない。

 福島県山間部の北塩原村では、住民らが温泉水から塩を製造中だ。若者ら人材を地方に送り込む国の事業「地域おこし協力隊」が、塩作りの体験教室などに取り組む例も各地で目立つ。

 塩の専売制は明治時代、日露戦争の戦費調達を目的に始まった。生産・流通の近代化が進んだ半面、昔ながらの塩田は姿を消した。

 平成9年に自由化されると、各地で個人や中小事業者が自然塩作りに着手した。

 伊勢丹新宿店の調味料のバイヤー、中本光昭氏(46)は、そんな個性豊かな塩の発掘に取り組んでいる。「最近は、産地のイメージが湧きやすい地域の塩が好まれている。購入して過疎地を支援したいという顧客も多い」と語った。

 一般的な食塩と異なり、ミネラルを多く含む自然塩は、味わいが深い。

 財務省によると、天日式など、工業的な製法ではない塩の29年度の販売量は、前年度比2割増の1万3千トンだった。

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