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【栃木この人】高校野球の球場アナウンス指導・剱持孝信さん(70)

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【栃木この人】
高校野球の球場アナウンス指導・剱持孝信さん(70)

 ■心伝え続け…教え子500人超

 「1番、センター、福田君」。球場に朗々と響き渡る若い女性の場内アナウンス。高校野球の風物詩ともいえる。アナウンスをしているのは、各校野球部の女子マネジャーたちだ。彼女らに10年以上アナウンスの指導を続けてきた。

 大学卒業後、ラジオ局、栃木放送にアナウンサーとして入社。学生時代にバスケットボールをしていた経験を買われ、2年目から高校野球の実況を担当した。当時、作新学院に「怪物」と呼ばれた江川卓さん(63)が在籍。「打者がバットを球に当てるだけで歓声が上がった。それほどまでに別格だった」と懐かしむ。

 県大会の実況を続け、甲子園出場校にも同行し、取材を重ねた。いつしか高校野球の持つ、汗と涙を流しながらの純粋なプレーに魅了された。取材を通じ親交を深めた選手がプロ入りすることも。今でも数人と連絡を取り合うという。

 転機は十数年前。県高校野球連盟から依頼され、県大会での場内アナウンスの指導を始めた。「明るく、元気に、正確に、女子高生らしく」をモットーに、優しく場内の人に話しかけるようなアナウンスを心がけるよう指導した。「大きな声で話すことも重要。声が小さいと語尾が消えてしまう」。長年のアナウンサー生活で培った技術を余すことなく伝えた。

 以前は「ひどいものだった」場内アナウンスだが、指導を始めると、女子生徒たちはみるみる上達していった。「高校生はすごく素直。言えばきちんと直るし、数日ですごく上達する」。自分の子の話をしているかのような笑顔だ。

 彼女らが得るのはアナウンス技術だけではない。指導を通じて、相手に言葉で自分の思いを伝えるというアナウンスの練習は、コミュニケーション力の向上にもつながっている。「クラスでも明るい性格になれたとか、社会人になってお客さんと話すのがうまいとほめられたとか、そういう話を聞けるのが本当にうれしい」。10年以上続け、教え子は500人を超えた。卒業してからも球場に顔をみせる教え子もいる。彼女らと話す時間は、かけがえのないものだという。

 70歳になった現在も、県内の野球部の女子マネジャーを集めた講習会や球場での指導などを通じてアナウンスの心を伝え続ける。「年を取ると声が出なくなってくる。でも、まだまだ続けたい」と気合十分。

 自分の子を世に送り出す感覚で指導しているが、「もう、子というより孫だね」。笑うその表情に優しさがこもっていた。(根本和哉)

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【プロフィル】けんもつ・たかのぶ

 神奈川県小田原市出身。昭和47年、栃木放送入社。スポーツ実況や報道などを担当。十数年前から県内高校野球部女子マネジャーのアナウンス指導を担当。現在、県高野連大会運営委員。宇都宮市在住、70歳。