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松尾敏男展(中)南風先生像 風格と品位、師弟の絆刻む

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松尾敏男展(中)南風先生像 風格と品位、師弟の絆刻む

「南風先生像」 1980年 熊本県立美術館蔵 「南風先生像」 1980年 熊本県立美術館蔵

 爽やかな緑のなかに立つ老人。松尾敏男の師匠であった堅山南風である。松尾にとって師を描くことは長年の夢であったが、なかなか言い出すことができなかった。

 しかし次第に衰えていく南風を目の当たりにし、意を決してモデルを頼んだ。南風は快く引き受け、弟子の前でポーズをとった。

 松尾は92歳の南風をありのままに描いた。一見弱々しく見えるが、きりっと結んだ口元や深いまなざしは、絵の世界一筋に歩んできた老大家の風格と品位を伝えている。師に対する敬慕に満ちた視線が、一分の隙間なく作品全体を貫いており、最初の肖像画とは思えない完成度の高さを誇っている。

 松尾は院展に出品する前に、南風のもとへ完成作を持参した。身じろぎもせず師の言葉を待つ松尾に、南風は一言、「私のような者を描いてくれてありがとう」と言ったという。

 弟子の成長を見届けるかのように、完成から約4カ月後、南風は彼岸へと旅立った。(長崎県美術館 学芸員・森園敦)