PR

地方 地方

【雇用のプロ・安藤政明の一筆両断】障害者法定雇用に指定難病患者を

Messenger

 中央省庁による障害者雇用数水増しの実態が発覚しました。実に国の機関の8割が不正計上していて、合計3460人も水増ししていたといいます。そのレベルも、2~3割じゃありません。中央省庁は、ほぼ「2倍増し」のレベルだったのです。もはや、何といって良いのかわかりません。

 地方自治体や、法の番人のはずの裁判所でも、次々に水増しが発覚しました。こんな行政、司法に支配される民間事業所は、どのような目にあっているのでしょうか。

 民間事業者は「障害者の雇用の促進等に関する法律」を根拠として、労働者の一定割合について、障害者を雇用するよう義務づけられています。この一定割合のことを「法定雇用率」といいます。現在の法定雇用率は2・2%です。従業員1千人の企業の場合、22人の障害者雇用が必要となるわけです。そして、法定雇用率が達成できなかった事業所には、「納付金」という名称で未達1人につき月5万円が徴収されます。

 月5万円といえば、仮に中央省庁の水増し人数3460人分だと、年間20億7600万円を納付しなければなりません。しかも中央省庁の中には、40年以上に渡って不正報告をしていた例もあるそうです。民間企業なら、納付金は倒産しておかしくないレベルになったでしょう。

 企業で働く方はお分かりのように、民間事業所にはさまざな業種、職種があります。施設の場所や、機械など物理的な問題で、障害者雇用が極めて困難な事業所もあります。

 それでも企業は、法定雇用率を念頭に、障害者が働きやすい職種を生み出したり、設備を改善するなどして、受け入れているのです。中央省庁の水増しには、ふつふつと怒りが沸きます。

 民間企業にも、課題はあります。

 障害者の法定雇用は、障害があっても問題なくこなせる仕事や、少し工夫すれば対応できる仕事に就いてもらい、障害者の能力を活用するのが本来の趣旨のはずです。

 一部の大企業などは、法定雇用率達成を主目的として、特例子会社でまとめて障害者を採用しています。障害者のキャリアプランを度外視した数合わせの雇用で、決して健全とは言えません。

 また、中小企業を中心に法定雇用率を達成できていない企業も多く、全体では未達は半数に上ります。

 理由は何でしょうか。

 厚生労働省の調査では、国内の身体、知的、精神障害者は計936万人です。総人口の7・4%を占めます。

 一方、障害者手帳所持者は計593万人とされています。法定雇用は、手帳を所持する障害者の雇用を求めています。

 65歳未満でみると、人口(9155万人)に占める手帳所持者の割合は、2・5%です。この中には、入院している人や、就労不能と診断されている人も少なくありません。そもそも就職を希望しない障害者も存在します。

 こう考えると、法定雇用率2・2%という数字が、大きすぎるのではないかという疑念が生じるわけです。

 雇う側だけの問題ではなく、就職希望者の絶対数が不足しているのだと考えられます。また、障害者側にも、名のある大企業への就職を望む傾向があるそうです。

 ここでも人手不足の中小企業と、ミスマッチが起きています。

 そこで、法定雇用率の対象を、「手帳所持者」に限定しないという考えがあっても良いでしょう。真っ先に対象に入れるべきは、難病患者です。

 難病というと、「とても恐ろしい病気」のようなイメージを持っている方も多いでしょう。難病は、指定難病だけで300種以上あり、一言で言い表すことが困難です。簡単にまとめれば、「症例が少なく、治療方法が確立していない疾患」です。決して働けないということでは、ありません。

 指定難病者数は、約99万人です(厚生労働省衛生行政報告例平成28年)。難病者でも、その症状等に応じて障害者手帳が交付されるケースとされないケースがあります。

 省庁の水増しは言語道断ですが、非難だけではなく、障害者雇用を建設的に考えていきたいものです。事業所に過度の負担をかけないように、法定雇用率の水準や対象を、社会の実態に照らして、改正すべきです。

                   ◇

【プロフィル】安藤政明

 あんどう・まさあき 昭和42年、鹿児島市生まれ。熊本県立済々黌高、西南学院大、中央大卒。平成10年に安藤社会保険労務士事務所開設。武道と神社参拝、そして日本を愛する労働法専門家として経営側の立場で雇用問題に取り組んできた。労働判例研究会、リスク法務実務研究会主宰。社労士会労働紛争解決センターあっせん委員。警固神社清掃奉仕団団長。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ