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【千葉聞き歩き】大人の「どんかんせん」

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 月末の金曜日は早めに仕事を切り上げ、個人消費を促そうと始まった「プレミアムフライデー(プレ金)」が相変わらずパッとしない。だが、魅力的な企画や商品があれば、まだまだ捨てたものではない。7月のプレ金の夜、小湊鉄道の観光用トロッコ列車に乗ってみて、そう思った。

 市原市内の五井(ごい)-上総牛久(かずさうしく)間の往復を時速25キロでガタゴト揺られながら、窓が取り払われた車両で飲む生ビールの味と解放感は格別だった。乗車は約2時間。社員らが総出で酒をついで回ったり、仮装もする“手作り感”は、沿線の田舎風景と妙にマッチしていた。

 隣席の若者グループの職場はプレ金でも早く帰れないそうだが、この日は「一度体験したい」と出発時間に間に合うよう仕事をやりくりした。

 平成29年のプレ金スタート後に、春から秋の月末金曜の夜にビール飲み放題の予約制「夜トロッコ」を始めた。料金は1人6800円。80人の定員は、毎回ほぼ満席という。黒川雄次常務は「プレ金が狙う消費刺激につながっていると思う」と手応えを語る。

 27年から運行を始めた観光用トロッコ列車は、5月に92歳で亡くなった絵本作家、加古里子(かこ・さとし)さんが翌年に出版した「出発進行!里山トロッコ列車」で、県外の人たちにも知られるようになった。

 加古さんの絵本に「しんかんせんでもどんかんせんでも」がある。新幹線との対比で、小湊鉄道のような山間部を走るローカル線が「どんかんせん」として描かれている。「育児や教育の場でも新幹線が讃(たた)えられ、鈍カン線は見すてられている」。あとがきで、加古さんはそう憂えた。

 同作は、東北・上越新幹線開業翌年の昭和58年の出版だ。鉄道に限らず、デジタル全盛の現在は当時より圧倒的にスピードが求められている。「夜トロッコ」は気ぜわしい日常を少しだけ忘れさせてくれる大人の「どんかんせん」だった。 (斎藤浩)=随時掲載

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