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【しずおか“お酒”巡り】(4)アオイブリューイング 「静岡市で醸造」貫く

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 静岡市葵区の静岡浅間神社の参道のほど近く、ツタがからむ白壁のしゃれた建物が「アオイブリューイング」のビール醸造所だ。意外なことに、同市内にビール醸造所はここ1カ所しかない。

 ◆「ないなら造ってしまえ」

 元しょうゆ醸造所を譲り受けて同市内で初めてビール造りに乗り出したのは、満(まん)藤(どう)直樹代表(49)。大阪出身で約20年前に転勤で訪れた静岡市が気に入り脱サラして住み着いたという、まさに“移住起業家”の走り。柔和な笑顔と歯切れの良い関西弁が印象的だ。

 きっかけは、女子中高生に絶大な人気を誇る老舗ハンバーガー店の経営を引き継いだこと。「若い女性だけでなく何とかサラリーマンも取り込みたい」とビールをメニューに加えることを思いつき、約40カ国のビールを飲み比べるうちに、自身がすっかりビール党になった。

 中でも香港で体験したフランスビールの味が忘れられなかった。なのに、日本には輸入されていない。そこで「ビールはどこにいても造れる。ないなら造ってしまえばええんや」と一念発起。静岡市に地ビール醸造所がないことも持ち前の挑戦心に火を付けた。「県内でも東部や西部には地ビールがあるのに、静岡市には一軒もないのが許せんかったんですわ」と、平成26年から本格的にビール造りを始めた。

 ◆なるべく地元の原材料を

 もちろんノウハウは全くなかったが、そこは人なつっこい関西人気質をいかんなく発揮。近県の名だたる地ビール醸造所に直接電話をかけ、頭を下げて教えを請うた。醸造に携わる職人もこのルートで集まった。ビールの原材料はほとんど外国産だが、日本らしさや静岡らしさを感じさせるように、なるべく地元の原材料を使い日本人の舌に合うように濃厚すぎないシンプルなビールの製造を目指した。

 こだわりは「静岡市で造るビール」であること。定番の「ゴールデンエール」や「お茶エール」に加えて、静岡市の特産品を使った限定ビールを数多く開発した。毎年1月には市内清沢地区で採れるレモンを使った「清沢レモンウィンド」が店に並び、今春には摘果したミカンを使った「みかんサワーエール」を編み出した。

 ただ、小さな醸造所なのでどう頑張っても月間4千~4500リットルしか製造できない。今夏に人気を集めた「桃ホワイト」は、市内の広野地区で収穫された桃をふんだんに使用しており、直営店を中心に提供先は限られるにもかかわらず3週間ほどで完売してしまった。

 ◆風土に溶け込むビール提供

 6月には静岡駅構内にビールが飲めるカフェを出店し、直営店は6店舗になった。「従来の御幸通り沿いの店舗とあわせて、県内外から観光客が来て足を運びやすい場所に出店できた」と満藤さんは顔をほころばせる。店舗は増えても製造量は増やせず、人気に供給が追いつかない状況は変わらない。それでも、規模拡大よりもご当地ビールを地道に丁寧に造り続けることを大切にしている。

 「静岡市に来ればこのビールがあると言われたい。うちは大手ではないけれど、何十年先までも静岡市の風土に溶け込むビールを提供できる醸造所として息づいていきたい」

 静岡市を愛しビールを愛する満藤さんの果てない夢は、ビールの泡のように大きく膨らんでいる。 (田中万紀)

                   ◇

 ■お茶エール その名の通り緑茶入りの「お茶エール」は、「茶産地静岡ならではのビールができないか」と創業時に開発され、少しずつレシピを変えながら造り続けているオリジナルのご当地ビールだ。

 茶葉は掛川産を使い、見た目はきれいな黄金色。味はもちろんしっかりビールの味で、口に含んだ瞬間、ほのかに緑茶の香りが鼻をくすぐる。

 珍しさに加えて苦みを抑えた味わいと軽やかな口当たりもあいまって、フル回転で年15回ほど仕込んでもしばしば欠品する人気ぶりで、静岡の新しい名産品と呼ばれる日も近そうだ。

 ■アオイブリューイング

【代表者】満藤直樹氏

【開業年】平成26年

【所在地】静岡市葵区宮ケ崎町30

【電話】054・294・8911

【休業日】醸造所は日曜(直営店は店舗により異なる)

【販売など】ビール各種は併設するバー「ビアガラージ」など直営店で提供。醸造所見学は随時受け付け、要問い合わせ。

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