PR

地方 地方

目を光らせる万引Gメン「イコー保安サービス」 「若者は夢を持って働いて」 神奈川

Messenger

 「お客さん、精算していないものがありますよね?」-。店を出たところを突然呼び止められ、事務所に連行される。万引Gメン(私服保安員)による“摘発”の瞬間だ。万引が小売業者の経営を圧迫する重大問題であり続けるなか、水際で犯行を見逃すまいと万引Gメンは目を光らせる。警備会社「イコー保安サービス」(藤沢市)の井崎弘子社長(63)は「複雑な事情を抱えているケースもあり、動機にはそれぞれの人生が深く関わっている。万引犯と対峙(たいじ)する保安員は、相手と真摯(しんし)に向き合う誠実さが大切」と説く。

 7月10日の早朝、茅ケ崎市内の商業施設で、ある女の行動を確認するため、同社の男性保安員(44)が店内を警戒していた。開店して間もなく、無職の70代女が入店。「間違いない」。店側からマークを依頼されていた万引の常習犯だった。

 ◆一瞬を見逃せぬ

 商品を手にした時点で追跡を開始し、案の定、女は人気(ひとけ)のない通路でカート内の薬や食料品などを素早くバッグに詰めた。レジを素通りして店の外に出たところで、男性保安員は声を掛けた。女は「魔が差した」と犯行を認め、高額な薬など“戦利品”計22点を返却した。

 男性保安員は、客の動作の一つでも「おおよその察しはつく」と語る。長年培った経験と勘で、「こいつ、やるな」と確信し、見張りながら追跡する。

 手に取った商品を吟味せずにカゴに入れるような買う気が感じられない人や、目線が商品に向かずに周囲の様子をうかがっている人、目付きが鋭い人などは怪しいという。万引Gメンは万引犯の放つ“異臭”を察知し、追い詰める。

 井崎社長はこの道45年のベテラン万引Gメンだ。万引犯を捕捉するために欠かせない3原則があるという。

 1つ目は、陳列棚の商品を手に取る瞬間を目視で現認する「棚取り」。2つ目は、万引した商品をどこに隠したのかを見極める「着手」。最後は、精算せずに店外に出たところで「待ちなさい」と引き留める「声掛け」。棚取りから店外まで、目を離さない。

 店内で商品を捨てたり、戻したりする可能性もあり、一瞬でも“目線切れ”をすれば「誤認のリスクにつながる」ためだ。万引犯は主婦や小学生、高齢者など、年代や犯行動機はさまざまだ。

 ◆人材が全て

 「たかが万引」と軽い気持ちで犯罪に手を染める人も多く、井崎社長は「より大きな犯罪を防止するためにも、罪の意識を持たせて反省を引き出す説諭は最も大切」といい、「感情的な説教ではなく、諭してあげること。保安員は愛情を持って相手の立場で考える謙虚な姿勢が必要」と語る。

 そうした理由から、井崎社長は社員教育に力を入れている。年2回、保安員は研修を受ける。

 県警OBを指導教育責任者として採用し、シチュエーション別に不審者の見分け方を指導したり、保安員が防犯カメラの映像を見ながら手口を解説したりするなどの訓練を実施。研修後は、保安員らとの食事会を設け、意見交換を行って士気を高めている。

 24歳という若さで会社を設立した当時、社員は井崎社長を含めて3人。社長であり、現場の保安・警備員として休む間も惜しんで走り回った。

 幼少期から「母親が必死に働き、苦労している姿を見て育った」ため、「母親を幸せにしたい。経済的に少しでも楽にしてあげたい」という一心で、取引先や年配の警備員らに頭を下げ続けた。その後、40代から会社は軌道に乗り始め、現在は鉄道会社など計200社以上と契約し、保安員計117人、警備員計777人を育成。「お前のところでしか働けない人がいる。そうした人のためにも、命を捨てる思いで働け」と語り、今年4月に他界した母親の言葉を胸に、今も自分を奮い立たせている。

 ◆目立つ中高年

 防犯カメラの設置・増設が進むなかでも、万引犯を現認して捕捉する保安員の需要は右肩上がりだ。昔は遊び感覚の子供が中心だったが、最近は中高年が目立つという。

 県警によると、平成29年の万引犯の認知件数は5999件と高水準で、全刑法犯の11%強を占める。うち1636件は65歳以上で、高齢者の万引は新たな社会問題となりつつある。

 また、2020年東京五輪・パラリンピックの開催を控え、鉄道会社など数十社から「巡回警備員を数百人規模で確保できないか」などの問い合わせが増え、臨時で約100人の警備員を増員することを検討している。井崎社長は「若い人が夢を持って働けるように、保安業務の資格制度を確立していければいいと思う。誇りある仕事として価値を高めていきたい」と話している。 (王美慧)

                   ◇

 ■イコー保安サービス

 ▽所在地=藤沢市辻堂元町1の2の18 (電)0466・35・3605

 ▽設立=昭和58年5月

 ▽資本金=3000万円

 ▽従業員数=グループ会社含め約900人(平成30年7月現在)

 ▽売上高=28億6000万円(平成29年度)

 ▽事業内容=本県や埼玉など7都県で、請負契約を結んだ百貨店などに保安員を派遣するほか、商業施設の駐車場で交通誘導などを行う警備員も育成している

                   ◇

【用語解説】万引Gメン(私服保安員)

 「Gメン」のGは「Government」の略。米連邦捜査局(FBI)の捜査官を「G-man」と呼ぶことに由来するとされている。護身術や万引犯の取り押さえ方、刑法などの研修を受ける。交代制でスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの商業施設に派遣され、一般客にまぎれて万引の監視に当たることを主たる業務としている。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ