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【甲信越静 夏の立ち寄りどころ】諏訪田製作所(三条市) 熟練職人の技を間近で見学

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【甲信越静 夏の立ち寄りどころ】
諏訪田製作所(三条市) 熟練職人の技を間近で見学

 □諏訪田製作所「SUWADA OPEN FACTORY」

 三条市の田園風景に、黒を基調としたスタイリッシュな建物が溶け込む。爪切りなど刃物のツールで世界最高峰の技術を誇る諏訪田製作所の工場「SUWADA OPEN FACTORY」だ。時間をかけて熟練職人たちが培ってきた技術だけでなく、原材料の廃材から生まれた数々のアート作品を間近で見学できる。平成23年のオープン以来、国内だけでなく海外から足を運ぶ観光客も少なくない。

 ◆廃材で作ったオブジェ

 工場に入り、まず目に飛び込んでくるのが、廃材で作ったライオンや羊のオブジェ。職人たちが仕事を終えた後などに、時間を見つけて手作りしたものという。通路を照らす照明やシャンデリアなども廃材で仕上げられ、素材が鉄とは思えないほどの温かみを放つ。洗練された工場内には、美術館のような雰囲気が漂う。

 建物全体が黒色で統一され、職人たちのTシャツも全て黒。腕の良い鍛冶屋には仕事が多く舞い込んで天井が黒くすすけることや、縁起の良い色とされるためという。もちろん、会社のコーポレートカラーは黒だ。

 職人技やデザインが光る同社の製品も展示されている。硬さの異なるステンレスが重ねられた「ダマスカス鋼」を使って仕上げた「ダマスカスレイヤード」は6万4800円と、同社で最も高価な爪切り。表面に浮かび上がる美しい紋様は爪切りごとに異なるという。

 さらに奥に進めば、製造工程を見学できるエリアだ。「ドーンドーン」とすさまじい音を響かせるのは「鍛造(たんぞう)」と呼ばれる工程。1千度以上の温度に上昇した鋼材を400トンもの力でたたき、強靱(きょうじん)な刃物に適した材料に生まれ変わらせる。

 見学通路には至るところにモニター画面が備えられ、特殊な金づちで固さや左右のバランスを丁寧に調整する「成形」や、ダイヤモンド製のヤスリを使って左右の刃が隙間なく閉じるように刃先を合わせる「合刃」など、熟練職人の技をさまざまな角度から目の当たりにできる。

 同社の職人は約50人。20代前半の若手から80代前半のベテランまでと幅広い。そのうち約20人は女性だ。

 営業部の鈴木晃子さん(42)によると、オープン当初は作業を見られることに反発する職人も多かった。ただ徐々に意識は変わり、大勢の人から仕事ぶりを評価してもらうことで、自信やモチベーションの向上につながるようになったという。鈴木さんは「今では手が空いているときに職人が自ら案内することもあります」と笑顔を見せる。

 ◆撮影は全て許可

 見学通路から工場内の撮影は全て許されている。秘蔵の技術をここまで見せてしまっていいのだろうかと心配になるが、同社にとってはどこ吹く風。「隠したいところは何もない。正直に、ものづくりをしているところを見てほしい」(鈴木さん)

 見学後は工場に併設されているカフェスペースで、こだわりのコーヒーやジュースをゆったりと楽しめる。高級爪切りを試せるコーナーもあり、優れた性能を肌身で感じられる。

 隣接する燕市と合わせた燕三条地域は、金属加工産業の集積地として国内外に知られる。鈴木さんは「燕三条の技術を途絶えさせてはいけない。ものづくりの現場をたくさんの子供たちに見てもらい、職人を目指してくれるようになってくれればうれしい」と力を込めた。(新潟支局 松崎翼)

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 日本列島は例年にない暑さに見舞われたものの、せっかくの夏をレジャーや旅で満喫したいと思う人も少なくないはず。足を運んでみたい甲信越と静岡のスポットを記者が訪ねた。

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 ■「SUWADA OPEN FACTORY」 三条市高安寺1332。午前10時10分~午後5時。定休は日曜・祝日と月曜。北陸自動車道中之島見附インターチェンジ(IC)から車で約15分。入り口近くの駐車場には20台収容できる。見学は無料。問い合わせは(電)0256・45・6111。