PR

地方 地方

【ハイ檀です!】ライフライン

電線にかからぬよう伐採してもらったエノキ
Messenger

 いやはや、台風12号の進路は奇想天外のものであった。関東地方から中部にかけての海岸線に上陸し、日本列島を東から西へと移動するなんて。心配したのは、先の大雨による大被害を受けた岡山県から広島県、勿論(もちろん)山口県や大分、福岡各県の方々は生きた心地がしなかったのではあるまいか。200人を超える尊い命が奪われ、未だに行方不明の方がおられる。このことを考えると、自然の力の中での人間の力など無に等しく思えてならない。それだけに、地球上に生を受けた人類は、もっともっと自然に対して謙虚にならなければならないのでは…。

 幸い、能古島に終の棲家を構えてから、自然のもたらす災害には出遭ってはいない。強いて挙げるならば、今年の台風7号だったと思う、この時は島と博多の街を結ぶフェリーが欠航したし、かなり強い風が吹き荒れた。我が家の屋根は万が一のことを考えて、瓦ではなくガルバー合板を採用していたので問題なかったが、数軒の家の瓦が一部飛ばされたという話も耳にした。我が家での被害は、庭の南側に植わっていたシュロの幹がポキリと折れてしまったことくらいだろう。

 それでも、真夜中に風が強くなると、家のすぐ脇にあるエノキの大木の枝が揺れ、家の庇(ひさし)にぶつかる音がしていた。このエノキの枝は伸び放題に伸び、貴重な電気を運ぶ送電線にも触れていた。一昨年のことと記憶するが、九州電力の係りの方がやって来て、送電線に枝がぶつかり大変危険なので、枝を切らせて頂きますという話があった。勿論、それに対する不満は毛頭ない。むしろ、こちらの方からお願いしたいくらいの話であった。と言うのは、光ケーブルの細い線も電線と同じ場所に引かれており、これがエノキの枝に触れていた。もしこの線が切断されてしまったら、インターネットが繋がらなくなってしまう。

 いやいやそれだけではない、送電線の本体自体が危ないかも知れない。送電線が切れてしまったらことは重大。我が家のエネルギーの大半は、電力に頼っている。調理用のガスはプロパンだが、電気がストップしてしまうと照明はおろか、電話も風呂も使えなくなる。冬ならば、床暖房もスイッチが入らないだろうし、全てのライフラインをもぎ取られてしまう訳だ。

 しかし、我が家の屋根には太陽光発電のパネルが存在する。9年前家を建てるにあたり、地球環境を守るためにと、10キロワット未満の発電が可能なパネルを設置。この代替エネルギーを用いれば、僅(わず)かでもエコな暮らしが出来るし、電力会社との契約で電気を買い取って頂けるという一石二鳥の有難い話。世の中の科学の進歩は目覚ましい。太陽光パネルを設置した際、リチウム電池による蓄電は世の中に浸透していなかった。が、今はかなり普及し始めた。

 されば、システムさえ切り替えれば我が家の屋根の上の発電装置で、ある程度のエネルギーを確保出来ることになるのだろう。発電装置が壊れなければ、万が一送電線が切断されても、日常の生活は何とか保てる筈(はず)。そこで近くの量販店を訪ね、蓄電システムのことを聞いたのだが、その量販店で新たに太陽光パネルを購入すれば設置が可能なのだとか。と言う次第で、どうしたら充電の為のバッテリーが導入出来るのか、方法は解らず終い。

 大手の建築会社に住宅を依頼すれば、家の設備に関する問題の窓口があり、相談すれば答えは簡単に出ると思う。だが、小さな工務店に建設を依頼した我ら夫婦は、湧き出ずる暮らしの悩みを、全部自分で解決せねばならない。世の中には、様々な職業がある。弁護士や税理士のような感覚で、暮らしの問題をサポートする職業が欲しいと、真剣に考えた。

 と、前置きが長くなってしまったが、エノキの大木の剪定(せんてい)を植木屋さんに依頼。重機が入らぬ狭いところでの作業なので、全部が手仕事。相当難儀したに違いない。それでも、かなりの枝を切り払うと、サッパリとした。これで、後10年くらいは心配はせずに済むと思う。歳を重ねて辛いのは、ライフラインを失うこと。現に、多くの被災地で、お年寄りが困窮されているのが現実。莫大(ばくだい)な予算が掛かるだろうが、一日も早く安心して暮らせる国家にして欲しいと願っている。

                   ◇

 だん・たろう 1943年、作家・檀一雄氏の長男として東京に生まれる。CFプロデューサー、エッセイストとして活躍し、「新・檀流クッキング」などの著書多数。妹は女優の檀ふみさん。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ