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【寄稿・金子熊夫氏】福島第1原発事故から7年 プルトニウム問題、長期的かつ多角的な視点で

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 東京電力福島第1原発事故から7年以上たったが、再稼働にこぎ着けた原子炉は9基にとどまっている。原発復活の前途は誠に厳しい。7月3日に閣議決定された第5次エネルギー基本計画では、2030年の原発のシェアを20~22%としたが、その実現は決して容易ではない。

 そのような状況の中で、日本の原子力発電の基盤に関わる現行の日米原子力協定が7月16日、有効期間の30年を満了し、以後自動延長されることとなった。

 周知のように、日本は原発の使用済み核燃料を再処理して得たプルトニウムを計約47トン所有している。うち約10トンが国内に、残り約37トンは、委託再処理先の英仏両国に保管されている。

 プルトニウムは核爆弾の原料になり得る物質なので、全て厳重に管理されており、国際原子力機関(IAEA)の厳格な査察下に置かれている。決して裸のまま放置されているわけではない。

 一方、青森県六ケ所村で建設中の再処理工場が本格稼働を始めれば、年間約8トンのプルトニウムが生成される。当面プルトニウムはウランと混ぜたMOX燃料(いわゆるプルサーマル)として普通の原子炉で燃やすが、それで消費されるプルトニウムの量が十分になるまでの一定期間、在庫量は増えることとなる。

 このことから、内外の反原発団体は、国際的な疑惑を招かぬために、日本はプルトニウムをこれ以上増やすべきではない、在庫量の上限を決めるべきだ、六ケ所工場は不必要だから廃棄せよなどと声高に主張している。

 さらに反原発団体は、日米原子力協定で認められている再処理権自体を放棄すべきだとして、協定の自動延長に反対している。米国でも、反原発派や核不拡散論者は日本の再処理に批判的だが、それは実際にはごく一部の人々の主張であって、原子力重視の立場に立つトランプ政権や知日派の人々は、日本の再処理の必要性に理解を示している。

 そもそも、この再処理権は長年の日米友好関係の中で、日本のエネルギー安全保障の観点から特別に認められてきた。筆者は初代の外務省原子力課長として、一連の日米交渉を直接担当したから、これは確言できる。自動延長された日米協定下でも再処理は当然、日本側の計画とニーズに従って粛々と行われるべきである。

 日本政府が今後、原発全廃を決めるようなことがあれば話は別だが、予見しうる将来、原子力を再生可能エネルギーと並ぶ重要なエネルギー源として利用し続ける方針を確立している以上、再処理とプルトニウム利用政策はぜひとも堅持すべきものだ。第5次エネ基本計画でも明記されたように、再処理は、資源の有効利用のほかに、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減などの観点からも必要だ。青森県内の関係自治体も六ケ所工場の意義を認め、その早期稼働を辛抱強く期待している。

 なお、再処理反対派やこれに同調する一部メディアはしばしば「日本が保有している47トンのプルトニウムで、6千発の核爆弾ができる」と宣伝する。あたかも日本政府が将来の核武装を想定して、そのためにプルトニウムを大量に備蓄しているかのように吹聴し、一般市民の恐怖心や不安感を煽(あお)っているが、それは由々しいデマゴーグである。

 そもそも普通の原子炉(軽水炉)の使用済み燃料から抽出されたものは、核兵器用のプルトニウム239の濃度が低く、実戦的な核爆弾はできない。それは科学的な常識である。

 さらに言えば、日本は唯一の被爆国として、原子力基本法と非核三原則の下、平和利用に徹している。核不拡散条約(NPT)にも加盟し、軍事利用の道をはっきり放棄している。IAEAの厳格な査察を忠実に受け入れているので、保管するプルトニウムでこっそり核兵器を作ることはできない。第一、国民がそれを黙認するはずがない。このことはIAEAが一貫して太鼓判を押しており、各国も一様に認めている。

 中には、日本は北朝鮮に核武装を断念させるために自ら再処理・プルトニウム利用政策を放棄すべきだと唱える人もいるが、仮に日本がそれを放棄したとして、北朝鮮が核武装を断念するとは到底考えられない。北朝鮮問題をリンクさせるのは、国際政治に疎い人にありがちな、全くのナンセンスな考えである。日本は、あくまでも原子力平和利用の大原則の下、「安全で平和な原子力」の推進に邁進(まいしん)すべきだ。それこそが唯一の被爆国であり、エネルギー資源小国の責務と考えるべきである。

 要するに、日米原子力協定自動延長と再処理・プルトニウムの問題は、以上のような諸々の点を十分考慮しつつ、情緒的な議論を避けて、長期的かつ多角的な視野から冷静に論ずべきである。

                   ◇

【プロフィル】金子熊夫

 かねこ・くまお 外交評論家、エネルギー戦略研究会会長。元外交官、初代外務省原子力課長、元東海大学教授。81歳。近著に『小池・小泉「脱原発」のウソ』など。

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