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【産経国際書展】会長賞(漢字部門)・河内紅漣さん(62) 腰痛回復 書く喜びかみしめる

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【産経国際書展】
会長賞(漢字部門)・河内紅漣さん(62) 腰痛回復 書く喜びかみしめる

 「書くこともままならない時期があったので、書き上げただけでうれしかったのに、こんな立派な賞をいただいて申し訳ないような気分です」。受賞の一報を聞き信じられない思いだったという。

 出品作に取り組んでいた3月20日、起床と同時に腰に激痛が走った。病院に駆け込んだところ、原因不明の腰痛と診断され「しばらく書いてはいけませんよ」と止められた。

 ようやく立ち上がって墨をすれるようになったのは4月上旬のこと。ふらふらしながらも懸命に筆を走らせた。

 書展への出品作は1日に1~2枚しか書かない。集中力を高めて仕上げる渾身の一作に自分で朱筆を入れ、前日までの作品と並べて比較し、反省点を生かして翌日にまた1枚書き上げるスタイルだ。

 今回題にとったのは漢詩「落木の吟」。男性がうたう漢詩は酒や戦といったテーマが多い中「花や風景を詠んでいて寂しい詩なのに心安らぐ」と選んだ。締め切りが迫る中、立って書けるようになったのが嬉しく「余計なことを考えず、書けただけで十分だと思った気持ちが伝わったのかもしれません」。

 書道教室を切り盛りする母親の背中を見て育ったが、ものづくりが好きで本当は料理の道に進みたかったのだとか。親の言いなりになるまいと反発したこともあったし、筆や墨を見るのも嫌だと思ったこともある。それでも「しばらく書かないでいると書きたくてうずうずしてきて、書道を嫌いにはなれなかった」。社会人になると自然な流れで母の教室を手伝うようになり、母の引退後はそのまま引き継いだ。

 「今はこの人生でよかったと思っています。子供って親には勝てないものですね」

 感謝の言葉を直接口に出すことは照れくさくてできなかったけれど、師匠でもあった亡き母に受賞を報告した。