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【拓け信州2018知事選】(中)厳しい県財政 県立武道館など箱モノ行政の功罪

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 県内の武道関係者が悲願としていた県立武道館(佐久市)の建設は、平成28年5月に県が基本構想を取りまとめ、正式決定された。足かけ6年にわたる議論の末だった。

 同6月の県議会本会議。阿部守一知事は、県立武道館を建設する意義をこう説いて、議会側に理解を求めた。

 「全国レベルの大会を開催することも念頭に、本県の武道振興の中核的拠点にふさわしい機能、規模を備えた施設とする」

 議会側からは大きな異論も出ず、建設工事は現在、2年後に迫った東京五輪前の竣工(しゅんこう)に向け、着々と進んでいる。見込まれる総建設費は57億1千万円に上る。

 ■阿部氏が踏み切る

 建設をめぐる議論は、逼迫(ひっぱく)している財政事情を踏まえ、積極論と消極論が交錯した。

 自民党県議らが幹部を務める県武道連絡協議会は22年、約17万人分の署名を添え、村井仁知事(当時)に建設するよう要請。だが、村井氏は財政難を理由に、色よい返事を返さなかった。

 節目となったのは、阿部氏が知事に初当選して以降、県議会で野党だった自民党が、与党化への動きを水面下で活発化させた時期と重なる。協議会トップには同党の実力者、故石田冶一郎氏が就いていた事情もあったとされる。

 実際、県は、前回知事選の26年前後から建設に向けた検討に着手。基本構想は、選挙後の28年5月に決まった。自民党は議会の最大勢力として、「阿部県政」を支える立ち位置に変わっていた。

 高齢化の進行で社会保障費は増大し、借金の返済額も高額なため、当時の中期財政試算(28~32年度)によれば、歳入から歳出を差し引いた財源不足額は、28年度末で32億円と試算されていた。

 建設費はもとより、維持費にどれだけ充てられるのか。県民の暮らしを守るという、行政にとって最重要な取り組みに必要な予算が措置されないのでは…。消極派は、既存施設の活用などを探るべきだと主張した。

 ■基金取り崩しても

 今年2月に発表された同試算(30~34年度)によると、今年度の財源不足額は52億円。34年度には113億円と倍以上の不足額が生じるという。

 不足額を補うため、財政調整基金の取り崩しは避けられない。同基金はいわば、「県の貯金」だ。いたずらに取り崩す措置は、将来の財政運営に支障を来しかねない。同試算では、484億円と見込まれる今年度の基金残高が、34年度になると112億円に減少するとしている。

 県の財政担当者は「予算編成や執行段階で、歳出削減なり歳入確保の見直しなりを不断に実行すれば、危機は乗り越えられる」と話す。だが、県経済の将来見通しは決して楽観できず、税収の大幅増も見込めない。

 ■財政を直撃

 県にとって、大型公共工事などの「箱モノ行政」は、田中康夫氏が12年、知事に就任して以降、事実上、「死語」だった。「脱ダム」宣言をはじめ、南箕輪村に建設予定だった「県子ども未来センター」の計画を中止し、中部縦貫自動車道のルート見直しも矢継ぎ早に打ち出し、立ち往生した。

 だが、阿部氏は就任後、武道館をはじめ、県信濃美術館(長野市、総建設予定費約110億円)の建て替え工事なども決断した。

 ある県議は「この先、景気に陰りが出たら『箱モノ行政』がつけとなり、県財政に重くのしかかる」と指摘する。

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